料理人見習い・ユーリの場合

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「サキ、塩は貴重品だ。あまり使いすぎは禁物だよ」 「はいはーい」 「『はい』は一回と習わなかったのかい?」 「はい……」 「それと、マイカ」  レンがサキの隣に座るマイカの名を呼んだ。いつもおどおどしている奴だ。すっかりレンに怯えてしまっている。 「植物採取での成果が少ないね。採取できる箇所などの発見は、より多くしてほしい」 「わかりました……」    場の空気が少し重くなる。  マイカは、たしかにこのベースキャンプで何かできているわけではない。料理もできず、魚も捕れず、植物の知識もない、家具を作ることができるわけでもない。  そんな奴が一人ぐらいいたってオレはいいと思っているが、成果を出さない者へのレンの態度は厳しい。  騎士団で部隊長もやっているレンはリーダーシップが取れるのかもしれないが、少し細かいところにうるさいところがある。ただし、レンがいなければ規律が保たれないのも事実だ。  そんな話を海岸線の見張りの交代ときに話すと、 「ユーリみたいに理解してくれる仲間がいることは僕の幸運だよ」  と端正なつくりの顔が微笑んだ。  少し窮屈なところもあるが、オレはここでの暮らしは本当に悪くないと思っている。  どんな料理を作るか考えていればいいし、それをうまいと食ってくれる奴らもいる。マイカだってイイ笑顔を見せてくれることもある。  ある意味、ここは天国だ。お迎えなんか来なくていいと少しオレは思っている。  いつか自分の店を持って繁盛させたいっていう夢は捨てていないけれど。
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