留学(予定)・マイカの場合

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留学(予定)・マイカの場合

「こ、これかな? 昨日見たのと同じ木だ、と思う」  そう私が言うと、サキは無表情のまま私を見る。違っていたのかな? 不安に思っているサキが微笑んだ。 「正解! これがリマンの木!」 「よかったぁ……」 「この実は柑橘類でね、焼き魚にも合うし、壊血病防止にもいいんだよ」  サキは教えてくれた。  植物学者のサキは、食べることのできる木の実や葉、キノコなども区別してくれる。 「これで、リマンの採集は大丈夫だね。きれいな切り方とかはユーリに教えてもらってね、私、料理はできないから」  とサキは笑いながらナイフでリマンの実を取ると、カバンに入れた。 「サキってすごいね、私が知らないことばっかり」 「んー、大したことじゃないよ」 「ううん、そんなことないよ。みんなすごい、みんな何かできて、みんなが生活に貢献している。私だけ、何もしていないのに食べさせてもらってる」 「まーた後ろ向きなこと考えるんだからぁ」  サキは私の肩を叩いた。いつでも前向きに考えることのできるサキは私とは違うなと思う。どんな風に生きてきたらこんな風に考えられるのか、ちょっと聞いてみたいと思っている。  サキの過去はまだ知らない。
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