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忍の忍び話
「よかったのですか?黙っているなんて言って」
王宮の屋根上で忍が2人、朝日を浴び始めた城下を見下ろしながら黄昏ていた。
「ハットリ様の情報を聞かせてもらった礼のようなものだ。黒髪の探索を頼む」
横にいるタイチに命令を下す。探し人が見つかったらどうするのか聞かなかったが、「お礼」を済ませたらさっさと自分の家に帰るような気がする。ジーク殿下はウィステリア様に興味を持っていた。毎日の公務や貴族への交流で、いつもスンとした顔をされていた殿下が、あんなに心からニコニコされるなんて。
「案外あの方が王妃まで上がって来そうな気がする」
「まあ、お顔は美しい方だと思いますが…どうでしょうね。俺はあの忍姫は怖いから嫌だなぁ」
タイチなりに細心の注意を払って部屋に侵入していたが、あっさり見抜かれて反射的に逃げていたな。
相手がハットリ様の弟子だと言うのに、侮った結果だ。厳しく、優しい皺くちゃの顔が浮かぶ。
生きていてくれただけでも神に感謝した。祈ったことなどないのに。
すぐにでも顔を見に走りたかったが、妹弟子も気にかかる。
屋根からスッと姿を消した。
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