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カーウィル
「わ、私だって恋愛の事なんてわかりません!」
妹のミリアに相談したが、いい返事はもらえなかった。
その代わり、アドバイスしてくれそうな人を呼んだと。
今日の夕食に招待したから、よろしくと言われた。
言っておくが名前も顔知らないんだぞ俺は。
ミリアはウィステリア様のところへいそいそと消える。
今日は午後から非番にして、屋敷へ向かった。
立派な来客の馬車が見えた。白い鷹に剣とヤマト刀の紋章…
コーデル家?!
「初めまして。カーウィル・コーデル・ケインです。ミリア様から相談とお聴きしましたが」
ウィステリア様の一つ上の兄が、にこにことソファに座っていた。
妹よ、男ではないか!それも何故、ウィステリア様の兄上なんだ?!
「ふふ。ウィスの事なら、なんでも知ってるからかもしれませんね。ミリア様とは家で修行をなさってた時に知り合いましたから」
!彼は読心術でもできるのか…喋ってもいいものか…
「会話を聞かれたくないので、結界を張らせてもらいますね」
応接間にブーンと、懐から出した札で結界が張られた。
「さて、ぶっちゃけてもらっても大丈夫ですよ。例えばジーク殿下が黒髪とか」
思わず剣に手がいく。
いったいどこまで知って…
「だいたい把握しています。私の目を見て気付きませんか?」
言われて初めて気付く、真紅の瞳。昔、アデルと忍に滅ぼされたキテの国の民。未来と過去を視ると言われていた。
「そう、私はキテの末裔。名前も良く聞いてもらえば分かりますよ」
カーウィル・コーデル…ケイン!
名前を聞く時、家名までしか意識しないのが一般的だ。
コーデル辺境伯の現当主はルーカス・コーデル・カティアス。
家名の後は同性の親の名前が入る。
「そう、養子です。奴隷だった私を妹のウィステリアに助けられましてね。彼女のおかげで、かけがえのない家族を得ました。大切な妹と王太子様の事ですよね。策は練ってきています」
なるほど、ウィステリア様も関係がある事だから打ち合わせでもしようかと、言いたいのだな。
「そうです。ああ、人が喋る前に読んで返事をしてしまうのはクセでして」
真紅の瞳でごちゃごちゃと説明しなくても、察してくれるから話はスピーディーに進んでいく。こんな部下がいれば、余計な時間を割かなくてもいいのにな…遅くまで打ち合わせが続いた。
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