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殿下とお出かけ
「どちらへ行かれるのですか?」
ミリアと珊瑚を連れて馬車に向かっていたら、ジーク殿下とばったり会った。
にっこり笑いながら、早足で寄ってくる。後ろからイヴァン様が慌てて走ってきた。
「兄が来ているので、挨拶に伺おうかと」
「アーウィン?それともダンテ?」
な…ああ、妃候補は全て調べ済みなのね。
「4つ上のダンテ、1つ上のカーウィルです」
「私も同行していいかな?」
「はい?」
「イヴァン。ウィステリア嬢と城下に出かけてくる」
鶴の一言ってこういうのを言うのね。
拒否もできず、私の馬車の対面に座る上機嫌なジーク殿下。
何がそんなに楽しいの?王宮にいる時より少し砕けた物言いに変わってる。
「君と出かけるのが楽しい」
「!」
顔に出てたのかしら、この正直な顔め!
殿下が満面の笑みを浮かべる。花を背負ってるわ、この方。
顔面偏差値の高い人って、笑顔も武器になるのね。
「少し店に寄ってもいいだろうか?手土産を持って行きたくて」
恐縮する御者に行き先を告げる。王太子様なんて乗せたことないもんね。
お店の前に馬車が止まると、スキップしそうな勢いで馬車を降りて私にすっと手を差し出した。
うわっ眩しい!自分の顔が耳まで真っ赤になってる!
…私って面食いだったかしら…?
スマートに私をエスコートして、高そうなお菓子が並ぶお店に軽やかに入っていく。
…家族以外の男性にエスコートなんてされた事なかったのよ、やばいほど心臓がドキドキするから、相手をダンテ兄様だと思い込むことにした…って無理だから。
「君はどのお菓子が好み?」
こんな高そうなお菓子なんて食べたことない。私の好きなのは、
「お祖母様が作ってくれるチェリーパイが好きです」
「自家製か。コーデルはチェリーの産地だったね。今度私にも作ってもらおうかな」
ニコニコする殿下は、果物がたっぷり乗ったフルーツタルトをワンホール注文して上機嫌なまま馬車に向かう。
後ろから…仕えていると似てくるのかな。ニコニコするイヴァン様が、可愛くラッピングされた箱を受け取って優雅に追いかけてくる。
殿下のエスコートで馬車に乗った私は、思わず笑ってしまった。
「ウィステリア嬢は笑顔も素敵だね」
ぎゃー!!だ、誰か〜助けてー!
ジーク殿下にキュン死にさせられそうなのー!
私を口説いてどうすんのよ。これも社交辞令ってやつ?貴族の常識?
真っ赤になって口をパクパクさせる私と、いちいち笑顔と口説き文句で攻撃する殿下を乗せてソリ商会へ向かう。
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