カーウィル兄様と再会

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カーウィル兄様と再会

やっと着いたわ。ぐたりした私にまたも満面の笑みで手を差し出すジーク殿下。 この方とお出かけは控えた方がいいわね。私がもたない …馬車で行かずに走っていけばよかった。 兄様に会いに行くのにこそこそするのが、嫌だっただけなんだけど。 「ウィス!」 カーウィル兄様だ!綺麗な赤い瞳でドアの前に立って両手を広げた。 遠慮なしにカーウィル兄様に抱きく。細いカーウィル兄様、またあまり食べてないのね。 もんどり打って後ろへ倒れそうになったのを、私が踏ん張って耐えた。 「もっと食べなきゃダメよ?カー兄様」 「ウィスの料理の方が美味しいからね。元気そうで安心したよ」 優しい笑顔でまたぎゅうと抱きしめてくれた。 いつも優しくて、なんでも相談に乗ってくれる大好きなカーウィル兄様。 そうだ、塔の事聞かなきゃだったわ。 「分かってるよ。王太子殿下を、別の部屋に案内するからその時にね。先に部屋に行っていて」 さすがカー兄!なんでも分かってくれる。 「初めまして、ジーク王太子殿下。コーデル辺境伯3男のカーウィル・コーデル・ケインです。どうぞ中へ」 「やあ、ジーク・アデルバード・ノアだ。」 ニコニコしている2人の間に火花が見える。幻覚かな? ミリアと一緒に部屋へ。 ロイヤルブルーのソファセットのある部屋に通されて座ると、ミリアがお茶を用意してくれた。 「殿下とのお出かけはいかがでした?」 「いかがも何も、ずっと甘い言葉と笑顔の攻撃を受けていたのよ。早く着いて!って祈ってたぐらい」 居た堪れなくなって、後半は気配を消しちゃったもの。 それでも好きな花は?とか好きなお茶は?とかの質問攻めまでしてくるし。 髪をあげているのは何故?とも聞かれる。未婚女性は基本的にアップにしないんだよね。 私は動きやすいからポニーテールにしているのよ。あまり周りの貴族からはいい顔されないけど。 殿下は否定もせずに「そうか」と言いうと、私の髪を一房握って口元へ持っていく。 「いい香りがするね。香油は何を使っている?」 「ここここ香油は、つつっつ使っていまいまてん!」 火にかけていた薬缶みたいに、頭から湯気が出そうだったわ。いや出ていたかも。 しかもどもった上に噛んじゃったし。 「そうですか」 ミリアまで笑顔になった。 もうここに来るまで、たくさん走った後みたいにどっと疲れてしまった。 カーウィル兄様の優しい声で起こされるまで、ぐっすり眠っていたみたい。
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