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さよなら王宮
私に与えられた部屋がすっかり片付けられた。
と言っても私の荷物なんて、ドレス3着と小物が少し。
最後に殿下がお部屋訪問した時に、持って来てくれていた花が寂しそう。
珊瑚とミリアで笑い合ったソファセットのある空間が、知らない場所みたいに見える。
「お世話になりました」
パタン
ミリアは騎士に戻り、珊瑚は私の護衛を終えて王宮の警備に戻る。
小さなバッグを片手に王宮の階段を降りた。
「ウィステリア様!」
白貴重で淡い桃色の騎士姿が駆けてきた。なんか眩しい。
「素敵ねミリア、騎士の制服ってうわっ」
ぎゅううと抱きしめられちゃった。
女子に抱きしめられたのも初めて。
家族以外の男性とお出かけしたり、口説かれたのも初めてだったわ。
「必ずお守りしますから…グスグス」
「ありがとう。コーデルに遊びにきてね、友達としてよ?」
「はい!」
「珊瑚もよ。元気でね」
珊瑚の気配がより薄くなる。そんなに悲しまないで、今生の別れでもないんだから。
「ウィス」
ダンテ兄様が馬に乗って迎えに来てくれた。
「え、まさか馬に乗るんですか?馬車でなくて??」
「そうよ。ダンテ兄様の愛馬はいい子なの」
遠ざかっていく馬上の人を、窓越しに眺める金髪の王子。
「そうだ、俺から逃げろ。捕まえてしまう前に」
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