兄上

1/1
前へ
/54ページ
次へ

兄上

「どう思う?」    質問を投げたのは、コーデル伯爵家長兄のアーウィン・コーデル・ルーカス。   「怪しいな。辺境伯の娘を王宮に入れるなんて、俺なら絶対しない」    応えたのは次兄ダンテ・コーデル・ルーカス。   「案外、単純な理由かもしれないよ?」    妹が乗った馬車を愛おしそうに見つめる3男カーウィル・コーデル・ケインは、含み笑いをして兄達を見上げる。   「何か知ってるのか?」   「教えないよ、絶対言わない。ウィスに絶交されちゃうからね」    にっこりする3男。胡乱な顔で見つめる息子2人をまたも苦悶の顔で睨む父親。   「マジで事件だけは起こしてくれるなよ?」   「…王太子いや、王宮の出方次第だ」   「ウィスに何かしたら…国ごと潰す」   「あはは、面白くなってきたね」   「はぁ〜〜」    大きなため息をついて屋敷へ帰る。  雲ひとつない青空に、足を止めたカーウィルが笑顔のままに呟く。   「無事に帰って来なきゃ、兄上達が何するか分かんないよ。ウィス。」
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!

190人が本棚に入れています
本棚に追加