1/1
185人が本棚に入れています
本棚に追加
/54ページ

ふっと目が覚めて、豪華なベッドの天井が見えた。 私のベッドってこんな豪華だっかかしら? そもそも天蓋ベッドなんて使った事なかったし。 ガバっと起き上がる。 「痛った!」 そうだわ、矢で背中に穴が空いてたんだった。 引きつった感じもするから、カー兄が縫ってくれたのかな。 毒は解毒剤で消えていても、少し手足が痺れてる感覚があった。 「気が付いたか?もう少し休んでいろ」 視界に入ったのは、いつもの顔で書類を見るアーウィン兄様。 実家…ではないわね。こんな広くて眩しいお部屋なんてなかったはず。 「ここは残念ながら王宮だ。お前、3日間寝ていたんだぞ。腹は減ってないか?」 アーウィン兄様が優しい…何か起きる前兆? 被害総額の返済の話でも出てくるかも。 バサッとサイドテーブルに書類を置いて近づいてくるアー兄。怖い… 私の額に手を置いて、 「熱は下がったな。あと3日は安静にするんだぞ」 「はい」 ふうと息をついて、また椅子に足を組んで座り直す。じーと私の顔を見てる。 な、何? 「ウィス」 「ひゃい!」 「そう怯えるな。お前、王太子とどうなりたい?」 「どうって…」 考えてなかったわ。お礼が言いたい一心だったもの。 結婚なんて…できないよね。あんな大騒ぎまで起こして、王宮でもともとなかった忍姫の評判なんて地に落ちたも同然よ。私がジーク殿下の元にいたら、私のせいでよく思われないわ。 「周りの評判なんぞ気にしなくていい。お前がどうしたいかを聞いている」 察したように続く強い言葉。 アー兄様には嘘は通用しない。 「ジーク殿下が悪く言われるのが嫌なの。私はコーデルに…」 「あの王太子はお前を嫁にする気だが?俺に1年しごかれることを条件にしてやったがな」 にやっと笑うアー兄様。なんて事を条件に出すのよ!3日でも地獄を見るのよ。 「王太子は考えもせずに承諾した。お前を手放す気はないらしい」 耳まで真っ赤になる。ジーク殿下とのキスまで思い出して、ますます真っ赤になった。 一緒にいていいの?私忍姫よ? アー兄様が今度は私を横抱きにして、隣の部屋へ運んで行く。 部屋はたくさんの花で埋め尽くされていた。 「王都の民とコーデルの民から届いた花だ、毎日たくさん届いている。メッセージカードも山のようにある。内容はほとんど結婚おめでとうだ」 皆んなから… 王都やコーデルの…皆の顔が浮かぶ。 束ねられたカードが部屋の隅に置かれていた。 アー兄様の首に抱きついて、潤む瞳を隠す。 「無事でよかった。忍の矢が刺さった時は肝が冷えたぞ。だが、俺の教えはしっかり守ったんだな」 飾られた花々を見て、アー兄様が微笑む。そうよアー兄様の教え。 「「国は何でできていると思う?」」 同時に同じ言葉が飛びたして、2人で笑った。
/54ページ

最初のコメントを投稿しよう!