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花
ふっと目が覚めて、豪華なベッドの天井が見えた。
私のベッドってこんな豪華だっかかしら?
そもそも天蓋ベッドなんて使った事なかったし。
ガバっと起き上がる。
「痛った!」
そうだわ、矢で背中に穴が空いてたんだった。
引きつった感じもするから、カー兄が縫ってくれたのかな。
毒は解毒剤で消えていても、少し手足が痺れてる感覚があった。
「気が付いたか?もう少し休んでいろ」
視界に入ったのは、いつもの顔で書類を見るアーウィン兄様。
実家…ではないわね。こんな広くて眩しいお部屋なんてなかったはず。
「ここは残念ながら王宮だ。お前、3日間寝ていたんだぞ。腹は減ってないか?」
アーウィン兄様が優しい…何か起きる前兆?
被害総額の返済の話でも出てくるかも。
バサッとサイドテーブルに書類を置いて近づいてくるアー兄。怖い…
私の額に手を置いて、
「熱は下がったな。あと3日は安静にするんだぞ」
「はい」
ふうと息をついて、また椅子に足を組んで座り直す。じーと私の顔を見てる。
な、何?
「ウィス」
「ひゃい!」
「そう怯えるな。お前、王太子とどうなりたい?」
「どうって…」
考えてなかったわ。お礼が言いたい一心だったもの。
結婚なんて…できないよね。あんな大騒ぎまで起こして、王宮でもともとなかった忍姫の評判なんて地に落ちたも同然よ。私がジーク殿下の元にいたら、私のせいでよく思われないわ。
「周りの評判なんぞ気にしなくていい。お前がどうしたいかを聞いている」
察したように続く強い言葉。
アー兄様には嘘は通用しない。
「ジーク殿下が悪く言われるのが嫌なの。私はコーデルに…」
「あの王太子はお前を嫁にする気だが?俺に1年しごかれることを条件にしてやったがな」
にやっと笑うアー兄様。なんて事を条件に出すのよ!3日でも地獄を見るのよ。
「王太子は考えもせずに承諾した。お前を手放す気はないらしい」
耳まで真っ赤になる。ジーク殿下とのキスまで思い出して、ますます真っ赤になった。
一緒にいていいの?私忍姫よ?
アー兄様が今度は私を横抱きにして、隣の部屋へ運んで行く。
部屋はたくさんの花で埋め尽くされていた。
「王都の民とコーデルの民から届いた花だ、毎日たくさん届いている。メッセージカードも山のようにある。内容はほとんど結婚おめでとうだ」
皆んなから…
王都やコーデルの…皆の顔が浮かぶ。
束ねられたカードが部屋の隅に置かれていた。
アー兄様の首に抱きついて、潤む瞳を隠す。
「無事でよかった。忍の矢が刺さった時は肝が冷えたぞ。だが、俺の教えはしっかり守ったんだな」
飾られた花々を見て、アー兄様が微笑む。そうよアー兄様の教え。
「「国は何でできていると思う?」」
同時に同じ言葉が飛びたして、2人で笑った。
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