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王都へ
王都までは2カ月かかる。流石にお父様たちの目を掻い潜って、ここまでは来れなかったもの。これで心置きなく探せるわ!なんて幸運なのかしら。
王都のセンスのいい洋服店とか雑貨店なんかを、お上りさんよろしく見ながら王宮へ。
広い応接間に通されて部屋に入れば、20人ぐらいの他の妃候補と思われる御令嬢が集まっていた。皆様の視線が痛い。中には私の事を知っている子がいて、ひそひそと扇子で口元を隠して話してる。こんなの慣れているわ。
「お集まりいただき、感謝します。私は殿下の近衛でイヴァンと申します。よろしくお願いします」
王太子様付きの近衛で、皆が憧れる精鋭の騎士様。身のこなしが素晴らしいわ、剣の腕前は相当な物よね。
できるなら手合わせ願いたい。まあ、無理でしょうけど。
…実家のイカつい屈強な騎士たちの顔が浮かぶ。皆んな強くて頼りになる、お父様自慢の辺境最強の騎士たち。
ざわっ!ざわざわ
王太子様が護衛と一緒に現れた。金髪に碧眼、すらっとしていて絵に描いたような王子様。
正直苦手なタイプ。俺はイケメンだって態度をとるもの。話してみても、お前みたいな娘の相手をしてやってるんだ感謝しろっていうのが、横柄な態度や言葉の端で伝わってきて嫌な気分になる。イケメンたちと話をして楽しかったことなんて一度もない。
ぽけーとしてたら浮いちゃうわね。令嬢方のように両手を胸に当てて、ジーク殿下を羨望の眼差して見る…フリをして、気配を消してこの部屋に配置された忍の気配をうかがう。…若い子が3人、壮年の忍が殿下の近くに2人。繋ぎをつけるなら若い忍かな。…殿下のお話前半聞きそびれちゃった。
「…というわけで、明日から順番に御令嬢方の部屋を訪問する。先ぶれは出すから良しなに」
それだけ言うと殿下はさっさと応接室を出て行った。入れ違いに王宮のメイドたちと、気配を消した護衛忍が入ってくる。
令嬢方に1人忍をつけるのね。ついてるわ!
「お名前をお呼びしますので、呼ばれた方からお部屋へご案内いたします」
身分順で名前が呼ばれていく。1人の忍が私の背後についた。ふふ、あなたが私の護衛忍ね。
おっと、私の名前が呼ばれた。
ざわざわざわ
顔は知らないけど、名前だけは知ってるのね、悪い意味で。扇子の向こうで笑っているのが見えた。
「1年間お世話をさせていただく、ミリアと申します。よろしくお願いいたします」
「コーデル辺境伯爵の長女、ウィステリア・コーデル・ルネです。こちらこそ、よろしくお願いいたします」
ドレスの端を摘んで優雅にお辞儀する。驚いたミリアがさらに深く頭を下げた。
周りからは「メイドなんかにお辞儀したわ」「さすが忍姫よね」って聞こえたけど、これからお世話になるわけだし、身分なんて関係ないわ。よろしくねミリア、色々とご迷惑をかけると思うの。
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