191人が本棚に入れています
本棚に追加
協力
空が少し明るくなってきた早朝。
応接間に向かい合う令嬢と護衛の忍。一方はにこにこと笑い、一方は呆気にとられていた。
「協力してくださる?」
「…おっしゃっている事は理解しました。しかし」
「探し人が見付かったら、帰るつもりよ。それまでで良いの」
「貴女が王妃に選ばれることだって…」
「有り得ないわ。調べはついているのでしょう?忍姫の事。協力してくれたら、何をするか、どこに行くのかを逐一言っても良い」
珊瑚は何かと何かを天秤にかけてる。
護衛忍が令嬢にまかれたなんてなったら申し訳ないもの。私にはそれができる術がある。
「分かりました。外出の時は必ず私をまかないと誓ってください」
「いいわ。その代わり、探し人の事はジーク殿下に内緒にしてくださる?」
「…危険な事をしないなら…」
これで王都も探せるわ。黒髪はこの国では珍しく、貴族ともなれば自然と絞られてくるはず。
「探し人の特徴は?」
「私より1つが2つ上で、黒髪。貴族男性」
「…貴族に黒髪の方はいらっしゃいません」
王都では黒髪は忌み嫌われる色で、貴族間では生まれないように、双方の家系まで調べるらしい。始まったばかりなのに、いきなり壁だわ。でも、少数ということは、それだけ当たる確率が高くなるって事よね。ニンマリした私を引きぎみに見つめる珊瑚。
その日から「紫の君」の捜索が始まった。城を抜け出す時、必ず珊瑚に言うから気配を消してしっかりついて来た。約束は必ず守る、コーデル家での家訓よ。珊瑚ったら雑貨店で、目をキラキラさせて見ていたのが微笑ましくて。妹ができたみたいで嬉しくなったけど、珊瑚に言ったらしかめ面をされそうでやめた。
私の手書きの地図に探した場所を書き込んでいく。まだ1/3ぐらいしか埋まってない。もう少し早めに城を出なくちゃ。
捜索し出して1週間後、ジーク殿下から手紙が届いた。
最初のコメントを投稿しよう!