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妻が小説を書き始めた。ジャンルはサスペンス。
夕食を食べ終えて立ち上がろうとした時に、恥ずかしそうに打ち明けられた。あなたに読んで欲しいの、と。
毎話ごとに女性が殺される。
一話ではユカリという女性が崖の上から突き落とされ、二話ではサユリという名の女性が首を絞められて死んだ。三話ではヨーコが包丁で刺され、最終話ではカケルという男性が毒を盛られて殺された。
俺は震え上がった。小説の完成度に、ではない。
殺された女性たちの名前は全て、俺の今までの不倫相手の名前だったからだ。
そして俺の名前はカケル。つまり彼女らは既に殺されており、次に殺されるのは…。
気づいた時には遅かった。視界が歪み、立っていられず床に手をつく。
目の前に影が落ち、無理矢理顔を上げる。そこには、微笑みをたたえた妻が立っていた。神の迎えが来たのかと錯覚するほどの、美しい微笑みだった。
どうやら俺の最後の晩餐は、彼女の作ったシチューのようだ…。
そこで俺の意識は途切れた。
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