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列車に乗り込むと、放送が聞こえた。
『間もなく発車いたします。』
車内放送がそう言うと、すぐにドアが閉まった。
「二人とも座って。」
マイコとミカコちゃんを座らせて。ドアの傍の地べたに座り込んだ。
行儀は悪いが、走り出した列車は先ほどと同じくらいスピードを上げて
とても立っていられないような速度だった。
30秒ほど走り続けた後、ふっと速度が落ちて、トンネルを抜けた。
立ち上がって窓の外を見ると、外は明るい、なんでもない田んぼの広がる郊外の風景だった。
「だからさ、ないって。」
「いやまじで、バイト先の先輩が行ったらしいんだよ。終電で一人の時があったらやばいんだよ。」
先ほどの大学生らしき二人の会話の続きが聞こえてきた。
無事に戻ってきたことを確認して、ケータイで連絡を入れた。
次の駅で(もちろん路線図にもある普通の駅で)連絡を入れた事務所の人間にマイコとミカコちゃんを預けて、後のことは任せた。二人を見送って席に座ると、先ほどのご老人が隣に座っていた。
「ご老人は、なんのお店をやっておられるんですか?」
ずっと気になっていたことを聞いた。
「古道具屋ですわ。あそこやと古いもんがよーさん手に入りますんで。」
ご老人はそういって笑った。
あの駅に自由に行き来できる老人。怪しくはあったが、今自分がどうできるもんでもない。とりあえず報告書に書くことにして、目的地である終点に向かうため僕は目を閉じてひと眠りすることにした。
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