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南地区は毎日のように爆音が響いてるのに、東地区はバイクの音がしない。 今日はたまたま静かなのかもしれないけど、どうにも違和感を覚える。 「ごちそうさま」 食事を終えて手を合わせると、左手首につけた腕時計は21時を知らせていて、ホテル探しを始めようかと腰を上げた時、足音が聞こえた。 「へぇ、見ない顔ですね」 「……」 振り返ると人影が視界に入り、近づいてきた2人の男。 1人はガタイがよく身長の高い男で顔は整っているけど、クマさんみたいな印象。 もう1人は細身で眼鏡をかけたインテリ男。 「こんな時間に女の子1人、しかもキャリーケースを持って」 どうしたんですか?と丁寧な口調で問うインテリ男。 顔は警戒させないように笑ってるけど、私には笑っていないように見える。 この男は紅竜の島に似ている。 島も顔は笑っているけど、目が笑っていないことが多かった。その顔をよく見ていた私としては、今目の前にいる男の顔はすぐに見抜ける。 これ、ひょっとしなくてもヤバいやつに出会ってしまったのかもしれない。 背中を冷や汗が伝った。 「旅行ですか?」 「えぇ、まぁ」 喋ってくるのはインテリ男だけで、クマみたいな人は黙って突っ立ったまま。 「これからホテルに行こうと思ってて」 「どこのホテルですか?女性1人では危ないので案内しますよ」 「とても心配なので」と優しく微笑みかける男は胡散臭すぎる。 あぁはい、そうですかって簡単に付いていくわけないじゃない。 「1人で大丈夫です。ご心配ありがとうございます」 「本当に?」 「はい」 「貴女……嘘ついてますよね?」 「…ッ」 突然空気が変わり、鋭い目つきに変わったインテリ男に鳥肌が立った。 一瞬呼吸をするのも忘れてしまっていた。 「旅行もホテルも全部嘘」 「そんなこと」 なんで、どうしてウソがバレた? 「嘘をつくとき瞬きをしている。気づきませんでした?」 えっ、瞬きをしてるってそんなことで嘘を見抜かれたの!? 人をよく観察し嘘を見抜いてきた男、侮れないしまずいと感じた。 この人がどんな人かも分からないのに、自分のことをペラペラ話すなんて絶対しない。 「家出ですか?」 「違う」 今度は瞬きをしていない、バレるはずがない。 「おやおや正直者ですね。正解ですか」 「なっ…」 なんで家出だってことがバレたの。 瞼が動かないように意識をしたっていうのに。 「眉が一瞬動きましたから」 瞼の次は眉ですか!なんて男だ。 この男達に何かされる前に逃げなくては、と考えたけど重いキャリーを引いて逃げるなんてこっちが不利だ。
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