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「南地区から来ました」
「南…紅竜のとこか」
「紅竜を知ってるんですか?」
当然だろ、と言いたげなシルバーアッシュの男。あのチームそんなに有名だったのかと改めて思った。
「私はその紅竜の姫です。表向きの」
「表向きだと?」
一瞬部屋の空気がピリついた感じがした。
肌で感じたソレはきっと間違いじゃない。
「本当の姫は私の妹で、私は妹の影としていつもいいように使われていた。だから、」
だから逃げ出してきたのだと、何者かも知らない彼らに話した。
さすがに争いに巻き込まれ死んで、2ヶ月前に戻ってきたんですなんて現実味のない話を信じてもらえるはずもないし、それを話すのはやめた。
私だって自分が体験しなければそんなこと信じない。
このままじゃ2ヶ月後に死ぬんですって、言えば頭がおかしいって目で見られるに決まってる。
誰にも話したことのなかった紅竜の本当のことを、素性を知らない男3人に情報を明かしてしまったことで、内心死ぬほど焦っている。
姿を消した私に、紅竜の姫が苺だと広まってしまえば情報をバラまいたのは私だってことになるから。
「なぁ、お前の名前は」
どうしようと顔を真っ青をにしていると、シルバーアッシュの男に名前を訊かれた。
「…芹沢、柚です」
渋々名を告げると満足げな顔をした目の前の綺麗な男。
「俺は久我 昴だ」
彼も自己紹介し、聞いたことある名前だなと首を傾げると、
「ZEROの久我と言えば分かるか?」
口角を上げてみせた彼を、私は光の速さで思い出した。
この男は、南地区以外を仕切っている関東一の暴走族【ZERO】7代目総長の久我 昴だと。
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