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妹は紅竜という暴走族のお姫様とやらで、私はその影…言わば身代わりという嬉しくもない役割だ。
表向きは私が姫と呼ばれていて、学校では陰気ないじめにあい、外に出れば紅竜に敵対する人達に襲われそうになったり攫われそうになったりと、散々怖い目にあってきた。
だけど、今日ほど怖い目にあったことは1度だってなかった。
偽物ながらも一応護られていたから。
それは影がいなくなってしまえば彼らが困るから。
私がいじめられているのも怖い目にあっているのも知りもしないで、のうのうと楽しく過ごして総長の川崎と毎日イチャついて…本当最悪。私だけがこんな目にあうなんて理不尽にも程がある。
今日だって護衛をつけて家に帰ってる途中、何者かに襲われて黒のバンに乗せられ攫われた。
あっという間の事だったけど、護衛は役立たずで瞬殺だった気がする。
意識を失って気がつけば知らない倉庫に連れてこられていて、雷神とかいう聞いた事のない暴走族の総長に「お前は人質だ」と言われ、目の前が真っ暗になった。
さすがに攫われるなんて状況は初めてで、こんな偽物の為に彼らが動くとは思えないしな…なんて諦めかけたら、川崎達は仲間を引き連れて現れた。
私を助けに?
なんて思ったが馬鹿みたいに少しばかり胸をときめかせたけど、妹の泣き顔を見ないためにこうして動いたに違いないと自分を笑った。
「てめぇ、何捕まってんだよノロマ」
そんな聞き慣れた言葉が敵の倉庫に響いた。
あなたの付けた護衛が役立たずだったんですよ、とは口が裂けても言えない。
そんな事を言う気力さえ今はない。
敵の総長は自分の女に何言ってんだ、と言いたげな驚いた顔をして川崎と私の顔を視線が行き来した。
そんな中、誰かの合図で始まった喧嘩。
骨と肉がぶつかり合う鈍い音や、男たちの殺気立った声が鼓膜に響く。
耳を抑えようにも縛られた手首のせいで不可能。その手首のロープを何とか外せないかとおしりの下をくぐって足を通し前に持ってくると歯で少し緩ませた。
無理やり引っこ抜くと手首は赤くなり血が滲んでいた。
2階にいるのは私と監視の男だけで、喧嘩は下の広場で行われている。
男たちは喧嘩に集中していて私の事なんて頭の中にきっとない。
監視が1人なら逃げられるとふんだ私は、一瞬の隙を狙って非常口に向かって走った。
「おい、待て!」
逃げたことに気づいてすぐさま追いかけてきた男だけど、紅竜側に逃げれば何とかなると思っていた私。
だけど、現実はそうはいかない。
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