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___ピピ… ピピピピ、ピピピピ 「…ん」 ピピピピ 「んー…うるさい」 けたたましく鳴るスマホのアラーム機能。 重たく、開かない目のせいで手探りでスマホを探して音を消した。 まだ眠い…もう少し寝ていたい。もぞりと布団に再び潜り込んだ時、ハッとした。 「……え…」 勢いよく起き上がると、今起こっていることに脳がパンクした。 視界に映る手は動くし、ちゃんと見える、透けてない。 「意識もハッキリしてるし…体も痛くない」 ロープを無理矢理とって、擦り切れていたはずの手首の傷も綺麗さっぱり消えている。 何これ、一体どういう事? 「何がどうなってるの?」 死んだはずなのに、なんで生きているのかが分からない。 それにここは、見慣れた私の部屋だ。 「まさか…!」 頭に過った考えが当たっているはずがない、とスマホの画面をまじまじ見ると、そこに表示されていた日付に目を見開いた。 「…嘘でしょ」 私が転落死する2ヶ月前の7月7日、七夕の日。 誰か嘘だと言って…。 「いった」 頬をつねってみたけど夢ではないらしい。 ここはファンタジーの世界でもなければ、魔法の使えないただの人間界。 それなのに私はファンタジーや転生ものでよくある“死に戻り”というものを体験してしまっている。 生きているのは凄く嬉しいけど、現実味がなさすぎる。 「何それ…って、このことは後で考えるとして、えっとえーっと今は平日だから…」 学校に行く準備をしなきゃ。 親は苺のことを起こすのに、私のことは起こしに来てくれないし、自分のことは自分でやれ主義。 もちろん私限定に発動するものだけど。 苺にはちゃんとした朝ごはんが用意され、私には用意されないことがほとんど。 たまに用意してくれたのかと思えば、苺とお父さんのために作ったお弁当のおかずの残り物で嬉しくもなんともない。 急いで制服を身にまとって焼いてないパンにジャムを塗って家を出た。 「行ってきます」 家を出る際、お母さんとすれ違ったけど行ってらっしゃいなんて言ってもらえない。 もう何度悲しんだだろう、今更泣くなんてことはなく、あぁ今日も言ってはくれなかったと思うだけ。私はいつしか諦めたんだ。 時刻はまだ7時と早い。 徒歩10分で学校に着いてしまうのにこんなに早く家を出るのは、苺に出くわさない為。 途中コンビニに寄り、おにぎりを1つ購入して学校に向かう。 学校に着いても7時20分にもならない為、学校の隣にある公園のベンチでジャムパンを頬張り時間を潰すのが日課だった。
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