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「違う、待って待って」 普通にパンを食べてるけど、それどころじゃないと思い出した。間違いがなければ私は一度死んでいる、そして生き返った。 「これからどうするのか考えなきゃ」 まず確認と整理をしよう。 2ヶ月前の7月7日に戻り、このままいけば9月7日に死んでしまうことになる。 そんな結末もう迎えたくはない。 「決めた。逃げよう」 ベンチから勢いよく立つと、拳を強く握って心に決めた。 死亡フラグを全力で折ると。 ___そう決めたはいいものの、学校では相変わらずだ。 時間になって登校すれば下駄箱に上履きは入ってないし、机の上にご丁寧に花瓶にいけられた花はあるし、お昼休みになれば。 「川崎くんとさっさと別れろよ」 呼び出されてこんなことを言われるのは日常茶飯事。 私、実は姫なんかじゃなくて、付き合ってるのは私の妹である苺なんですとは口が裂けても言えない。 言ったら私が川崎に殺される。 2ヶ月後を待たずして死を迎えてしまう、それだけは避けなければ。 総長である川崎のチーム、紅竜は南地区を仕切っている暴走族で、この地区で彼らを知らない人はほとんどいない。 北地区、東地区、西地区にもそれぞれ族があって確かどこかにすごく強い関東一のチームがいた気がする。 名前を忘れてしまったけど、暴走族のことなんて詳しく知らない。 「はぁ…おにぎり食べよ」 呼び出されたせいでお昼休みも残り少ない。 私がこんな目にあってる間も、苺は紅竜の人しか入ることが許されない空き教室でのんびりしてるんだろうな。 空き教室のある方向を見つめ、ひっそり校舎裏でおにぎりを頬張った。 梅の酸っぱさが口いっぱいに広がる。 「柚姉、帰ろ!」 「…苺」 ハスキーがかった私なんかの声より遥かに綺麗で可愛くてよく通る声に振り返った。 先に帰ってしまいたいと思う私の気持ちとは裏腹に、放課後は苺と帰るのがお決まり。 教室に来なくていいと言っているのに「私が迎えに行きたいの」と言うことを聞かない。 「苺ちゃんだ。やっぱり可愛いよね」 「本当、姉妹とは思えねぇ」 「姉は相変わらずだしよ」 教室に来て欲しくない理由はこれだ。 私が地獄耳なだけなのか私しか聞こえないように言っているのか、クラスメイトたちは心無い言葉を吐く。 確かに、顔を隠すように伸びきった髪に黒という色は冴えない女の印象を与える。 対して苺は母譲りのライトブラウンの髪に可愛らしく結ったツインテール。ナチュラルメイクをして自分の可愛さをさらに引き出している。 私も前髪を上げてメイクをしてみたことはあったけど、なんだか恥ずかしくてやめた。 たまに自分の部屋で密かにやったりはするけど、家族にも見せたことはない。いつもやり終えては苺みたいに可愛くはなれない鏡に映る自分を笑ってそっとメイク落としに手を伸ばす。
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