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まずは資金集めをしなくてはならない。
お金がなくては逃げられないし、親からお小遣いなんて貰っていないから。
自分の部屋から物は消えてしまうけど、命には代えられない。
「これと…これも売れそう」
クローゼットから服や漫画を引っ張り出し、フリマアプリなどを使って売れるものをすべて売った。
だけど、まだ足りない…もう少し売れるものがないかと探していたら。
「これ」
アクセサリーを入れてある引き出しに、封の開いてないブランド物のネックレスを見つけた。
これは13歳の誕生日の時に何の気まぐれか、両親が唯一くれたプレゼントだった。
売るか一瞬悩んだけど、両親もきっとあげたことなんて覚えてなんかいない。売ったってきっと気づかない。
私は勇気を出してネットオークションに出すと、1週間後ネックレスは1万5千円で落札した。
目に見えてものが少なくなったなと感じる部屋と引替えに5万円近く手に入れた。これだけあれば。
「あ、そうだ」
ハッと思い出したのはへそくり、というか自分の通帳で、中学から自分の金は自分で管理しろとお母さんから渡され、お年玉はほぼ手を付けずに貯めていた。
下着を入れているタンスの奥に手を伸ばすと、16万弱が入った通帳があった。
あぁ、なんでこれを忘れていたんだろう。
「これだけあれば十分」
後はキャリーバッグに必要最低限の物を詰めるだけ。
「これでよしっと」
パンパンになったキャリーを見つめそろそろご飯食べ終えたころだろうと、下に行き冷めた料理を温め直してさっさと食べた。
1人寂しく食べるのに慣れたなんて、可哀想すぎるよね…と自分の頭を撫でてあげたい。
お皿を洗い終えて手についた水滴をふきとっていると、飲み物を取りに来たお母さんと目が合った。
「あ…ご飯美味しかったよ。ありがと」
「そう」
「……」
傍から見れば母と子の会話には到底思えないほど冷え切っている。
「明日は私もお父さんも帰り遅いから自分でやって」
「分かった」
なんで、どうして?なんて言わずに聞き分けのいい子を何年演じてきただろうか。
明日両親が遅く帰るのは分かった。きっと苺も遅く帰ってくるに違いない。
___明日逃げよう。
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