二人きりの駅。

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   クソッ……! 俺だって……! 俺だって……!  阿川さえいなければ……! 阿川さえ…――!  闇雲に階段をバタバタと降りると途中で段を踏み外した。そして、そのまま階段から滑って地面に落ちて倒れた。なんだか最悪だ。ボロボロの気分だ。体中が痛い。幸い足はなんともなかった。なのに体よりも、心の方がズキズキ感じてきた。  なんで俺あんな奴に負けてるんだろう。  阿川さえいなければいいのに。  なんであいつばっかりが、皆にチヤホやされているんだ…――?  なんであいつばっか……。  心の中に嫉妬と悲しみと醜い感情が、一気に押し寄せた。 ……最低だな。何も悪いのは阿川じゃない。全部自分自身だ。ただ俺の努力が足りないだけだ。それを阿川の省にしてみっともなく八つ当たりしているだけだ。 アイツはいつも文句を言わずに手伝ってくれている。何故そこに気づかないんだ。俺って奴はホント最低だ――。  消えるのは阿川じゃなく、俺だ。  俺が消えればいい。  俺なんか――。 『葛城さん、どうしたんですか……!?』 「ッ……!?」  阿川は倒れた俺に声をかけると、上から不思議そうに覗いて見ていた。 「あっ……!」 「葛城さん地面に倒れたままだと大事なスーツが汚れちゃいますよ? せっかく良いスーツ着ているのに、台無しです。さあ、立って下さい」  阿川はそう話すと手を差し伸べてきた。俺にさっき酷いことされたのに怒っていない様子だった。そんな彼の優しさを前に抑えていた自分の感情が一気に混み上がった。 「阿川…っぅ…!」 「葛城さん、なんで泣いてるんですか…――?」 「ううっ…!」  今までのことを悔い改めるように、彼の目の前で頭を下げて土下座をした。 「今まですまなかった! 俺は今までお前にずっと、八つ当たりばかりしていたんだ…――!」 「へ…? 葛城さ…――」 「許してくれとは言わない!! だけど俺は、お前がホントは羨ましかったんだ……!」 「あの……」 「お前の売り上げ成績ばかり伸びて、俺はそれが憎たらしかった! 新人の癖に出来た奴でそれが余計に許せなかった! 課長には俺とお前をいつも比較ばかりされてその度に苦痛だった…――! お前なんて消えちゃば良いって思ったし、ここに居なければって何度も思った……! お前と同じ空気を吸うだけでも息がつまりそうだったんだよ…――!」 「葛城さん……」 「でもお前良い奴で! 俺の仕事を文句も言わずにいつも手伝ってくれて、なのに俺はお前に散々、八つ当たりした……! 本当に嫌な奴だよな! こんな奴がお前を責める資格なんてねーよな!? 本当にすまなかった! お前は良い奴で優しい奴だ! それなのに俺は…――!」  目の前で自分の溜まっていた気持ちを全部吐き出すと、そこで頭を下げたまま惨めに泣いた。阿川は俺の正直な告白に驚いてる様子だった。そして何も言わずにそこに佇んでいると声をかけてきた。
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