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「弘部君。また連絡するわね」
寿実と連絡を取り合うくらいの仲らしい。
先週、知り合ったばかりなのにさすが寿実。
なれてるわよね。
「私、先に席に戻るわね」
まだ寿実が話し足りないようだったから、先に席へ戻ろうと気をきかせた。
友人の恋路を邪魔したくない―――そう思った瞬間。
「奏花!」
逢生だ、逢生がまた現れた。
「深月さんっ!走らないでください。髪のセットが崩れます!」
マネージャーらしき人が逢生の後ろを追いかけてきた。
鬼ごっこかな……?
「逢生!?どうしてここに」
タキシード姿で髪をセットされた逢生はいつもの雰囲気とは違って大人っぽい。
「奏花が二階席にいたから」
逢生は嬉しそうな顔で笑っていた。
いつもと同じ顔。
それを見てホッとした。
―――ちゃんと逢生だ。
「ねえ。あれって深月逢生じゃない?」
「似た人じゃなくて?」
「もう開演なんだから、そんなわけないわよ」
そんな声が聞こえて慌てて逢生の背中を押した。
騒ぎになっては困る。
「ここにいたらダメじゃない!」
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