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「おい、弘部ー!言うなよ」
営業チームの中で一番年下の弘部君がうまくフォローする。
誘われた覚えはないけど、まあ、いいやと思いながら席に着いた。
「渓内さんはいつも仕事が終わるとさっさと帰るから、てっきり決まった相手がいると思ってたなあ」
「そうそう。気づいたら『いない!?』ってなるんだよな」
それは遅くなる前に帰らないと逢生から電話がかかってくるから。
でないで放置しておくとうちの家族に電話するからね?
あんたは私のお父さんかってのよ!
とはいえ、逢生の生存確認のためでもあるからしかたない。
留学先でホームシックになった時、食事が食べられなくなったことがあり、留学先まで行くことになった。
私の有給休暇よ、さようならってなったからね。
逢生の両親は二人とも医者で息子は放置。
五体満足なら自分のことは自分でやれのスタイルを貫かれている。
なかなかサバイバルな親なのだ。
「忙しくて、すみません」
そんなこっちの事情は話せない。
また『奏花ちゃんの彼氏って―――以下同文』ってなるのは目に見えている。
一番無難な答えを返しておいた。
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