5322人が本棚に入れています
本棚に追加
「深月、どうしたの?音が乱れてなかった?」
桑地が駆けつける。
けれど、俺は答えられなかった。
理由が奏花なんて絶対に言えない。
「挑発されたくらいで動揺してどうするんだ?奏花ちゃんがいなくなったら、お前のチェロは終わりだな」
奏花がいなくなる?
暗い舞台そでが昔を思い出させた。
明るい舞台では唯冬と知久が弾いている
「勝負は俺の勝ち。勝ったら奏花ちゃんが俺とデートしてくれるって約束してくれたんだけど、いいよな?この約束、知っていたか?ってその顔じゃ聞いてないか」
スタッフからタオルを渡されたのにそれを落としてしまった。
「どうしたの?深月!?」
桑地の声が遠い。
彼女になっても奏花は俺のものにはならない。
もし、梶井の方がいいって言われたら?
失敗した俺のチェロより梶井のほうがかっこいいってやっぱり言う?
「深月さん!どこに行くつもりですかっ!」
「深月っ!コンサート中よっ!」
気づくと宰田と桑地が俺の腕をつかみ、他のスタッフまで駆けつけてきた。
俺の様子をおかしそうに梶井が見下ろす。
最初のコメントを投稿しよう!