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リベルタンゴの曲の時は様子がおかしかった逢生だけど、次の演奏からはいつもどおりの逢生だった。
常連マダム達も気づいてない。
ほっとして逢生の音を聴く。
音楽センスはゼロの私だけど逢生の音だけはわかる。
ずっと聴いていたせいかもしれないけれど、三人が弾くグノーのアヴェマリアは清らかで澄んだ音。
これは三人の定番曲。
前に逢生が言っていた。
『アヴェマリアを弾く時、俺達の一番大事な女性を想って弾けって知久に言われた』
だから、これは―――思わず、顔が赤くなってしまう。
陣川さんは本当に女心をぐっとつかむのがうまいわね!
逢生によからぬことを吹き込んで教えてるのは陣川さんじゃないかと疑いの眼差しを向けた。
最後の曲は梶井さんを加えた四人で。
ラストはアメイジンググレイス。
マダム達が感嘆のため息をつく。
わかる。
梶井さんの音は人を魅了する。
どうしたら、あんな音がだせるのか。
それに加えて、あの三人の王子っぷりときたら梶井さんを確実に圧倒してるわよ。
マダム達が乙女ポーズで聴いている。
実態を知っている私ですら、かっこいいなんて思ってしまう。
演奏がすべて終わってアンコール。
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