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陣川さんと逢生の早弾きや桑地さんと渋木さんのジャズアレンジ。
でも、最後はやっぱり梶井さんだった。
梶井さんが弾いたのは白鳥。
お母さんが好きだった曲。
マダム達は惜しみ無い拍手を送っていた。
「梶井さん。今回も素敵だったわねぇ」
「あの若い子達もよかったじゃないの」
「私はCD、持ってるのよ」
「いつの間に!」
演奏が終わるとマダム達は感想を言い合っていた。
「一番よかったのはタンゴじゃない?」
「あのチェロの子。梶井さんに噛みつく子犬みたいで可愛かったわね」
「要チェックよ」
逢生が褒められてる!
よかたったね、逢生。
子犬っていうのが気になるけど、悪い評価じゃないわよ。
ありがとう!ありがとうっと手を握って回りたいとこだけど、それをやるとただのおかしな人だ。
遠巻きに眺めて、目でお礼を言っておいた。
逢生ってば、やるじゃないの。
自分が褒められたみたいに嬉しい。
席を立ち、楽屋へ向かう。
さすがにキスは無理でも頭くらいはなでてあげよう。
そんな気持ちになっていた。
宰田さんから渡されていたIDカードを首からかけて、関係者通路に入った。
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