第34話 勝敗

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楽屋の周りはまだ静かで戻ってきていないようだった。 「逢生、お疲れさまって……まだみたいね」 楽屋に顔を出すと逢生も他の人達もいなかった。 宰田さんも見当たらない。 まだ帰ってきてないんだと思って、もう一度楽屋の外に顔を出した。 そこへちょうど梶井さんが服を着替えて楽屋から出てきた。 「奏花ちゃん、来ると思っていたよ」 どうして梶井さんが? 今日のコンサートの主役なのに早々に楽屋に戻ってきていいの? 梶井さんは私を見つけて笑った。 「今からデートに行こうか」 「行きませんよ。だいたい今日のコンサートは梶井さんが主役でしょ?打ち上げにでなくていいんですか?」 「今日は奏花ちゃんといたいからパスしてきた。行くよ」 梶井さんが強引に腕をつかんだ。 「深月、いいだろう?俺が勝ったんだから」 やっと今、楽屋に戻ってきた逢生達が私と梶井さんを見ていた。 梶井さんは私の手に持っていたバッグを逢生に放り投げた。 強くバッグを叩きつけられて受け止めたけど、痛みで顔をしかめた。 「梶井!」 「深月。今日は俺に奏花ちゃんを譲れよ。負けたんだからな!」 逢生がなにか言ってくれるはず!
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