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楽屋の周りはまだ静かで戻ってきていないようだった。
「逢生、お疲れさまって……まだみたいね」
楽屋に顔を出すと逢生も他の人達もいなかった。
宰田さんも見当たらない。
まだ帰ってきてないんだと思って、もう一度楽屋の外に顔を出した。
そこへちょうど梶井さんが服を着替えて楽屋から出てきた。
「奏花ちゃん、来ると思っていたよ」
どうして梶井さんが?
今日のコンサートの主役なのに早々に楽屋に戻ってきていいの?
梶井さんは私を見つけて笑った。
「今からデートに行こうか」
「行きませんよ。だいたい今日のコンサートは梶井さんが主役でしょ?打ち上げにでなくていいんですか?」
「今日は奏花ちゃんといたいからパスしてきた。行くよ」
梶井さんが強引に腕をつかんだ。
「深月、いいだろう?俺が勝ったんだから」
やっと今、楽屋に戻ってきた逢生達が私と梶井さんを見ていた。
梶井さんは私の手に持っていたバッグを逢生に放り投げた。
強くバッグを叩きつけられて受け止めたけど、痛みで顔をしかめた。
「梶井!」
「深月。今日は俺に奏花ちゃんを譲れよ。負けたんだからな!」
逢生がなにか言ってくれるはず!
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