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その言葉は梶井さんがいつも思っていることなのだろう。
「奏花ちゃんは俺と一緒に行ってくれないってことか」
「一緒に行けません。一人で頑張ってください」
「冷たいな!まあ、一人で頑張るしかないけどね」
思わず笑ってしまった。
「私、留学する逢生にも同じことを言ったんです」
「深月にも?」
「でも、逢生は一人では頑張れない。毎日連絡するし、こっちにきてくれないと死ぬとか言って」
「脅しかよ!」
「そうなんですよね」
本当に逢生はどうしようもない。
ホームシックになるし、すぐにすねるし、焼きもちやくし、私が彼氏を作ろうとしても邪魔してくるし。
「でも、いつも逢生は私だけを待ってるんです。犬みたいにずっと」
はぁっとため息をついた。
もうね、私が好きになるまでしつこく『マテ』してるような男よ。
じっーと見つめてくるあの目から逃れられるわけがない。
「あんな子犬のどこがいいんだ?」
絶対に俺のほうがかっこいいだろうと梶井さんがあきれた顔で言った。
「私よりも私のことが好きなところです」
「は……」
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