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「ここにいるってよくわかったな。GPSを仕込まれているかもしれないと思ってバッグを深月に渡したのに」
渋木さんがくすりと笑った。
「梶井さんの考えはだいたいわかりますよ。初めて会った場所のことは逢生から聞いていましたからね」
「腹黒い王子だな」
「褒め言葉をどうも」
渋木さんはにっこりと微笑んだ。
けれど―――
「陣川!渋木!深月!お前達はなにをしているのかね!後輩の演奏会にヘリで乗り込むとはなにごとだ!」
年配の気むずかしそうな男の先生がこらっ!と三人に叱りつけていた。
かばう気にはなれないのはなぜだろう。
むしろ『もっと言ってやってください』と思ってしまう。
これが日頃の行いってやつね……
先生が怒っているというのに三人は反省するどころかケロッとしていて、なぜか堂々たる態度で言った。
「ヘリは帰らせたし、なんなら飛び込みで弾こうか?」
「野外というのも悪くない」
「おわびに弾く?」
陣川さんも渋木さんも逢生も反省というものを知らないということだけはわかった。
「すみませんでした。すぐに撤収させますから」
代わりに謝って逢生の手を握った。
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