5219人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
「奏花。コンサートを頑張った俺にごほうびが必要だと思わない?」
マンションに帰ったなり、そんなことを逢生が言い出した。
負けたことを気にしていたしおらしい逢生はどこにいったのよと思ったけど、それを気にしているのはわかっていた。
梶井さんから奪われた時の逢生は私の気持ちを探っていたことも。
お願いを聞いてくれるまでは動きません!というようにリビングのソファーに座り、じいっーと私を見つめてくる。
……犬かな?
「ごほうびね……」
「それか、落ち込んでいる俺を慰めて?」
「どこが落ち込んでるのよっ!」
元気いっぱいでしょうがっ!
しかも、帰りにお腹空いたとか言って屋台でラーメン食べたわよね?
じろっーと逢生を見ると目を期待で輝かせている。
まあ、あの梶井さんと対等に弾けたんだから、頑張ったは頑張ったのよね。
逢生達がオマケになっちゃうくらい梶井さんって有名なチェリストなんだし……
「わかったわ……」
うなずくと逢生は嬉しそうにほほ笑んだ。
でもね―――そのお願いって言うのはこれなのっていう気持ちよ?
正直言って、聞かなきゃよかったって思って後悔している。
最初のコメントを投稿しよう!