5226人が本棚に入れています
本棚に追加
/270ページ
弱々しいふりをした逢生にいいようにされたんじゃないかっていう疑惑のほうが大きい。
ちゃぷっとお湯を手でかきまぜた。
バラの香りがする入浴剤にぬるめのお湯。
計画的犯行と言わざるを得ない。
すっぽりと腕の中に私の体を包み込み、背後からキスを落とす。
逢生のご褒美は前々からしつこく要求していた『お風呂に一緒に入ろう』っというものだった。
「逢生。もういいでしょ?」
何度も体にキスをする逢生がくすぐったい。
腕の中から逃れようとするのに強い力が体を離してくれない。
「まだ」
嘘をつきなさいよ、嘘を。
諦めておとなしく逢生の胸に寄りかかった。
嬉しそうに耳や首筋をなめる。
前世どころか、もう人間やめて犬なのってくらい何度も。
「ねえ、逢生。私がもし梶井さんのこと好きだったらあのまま、梶井さんにあげてたの?」
ずっと気になっていたことを聞いてみた。
逢生の顔を見上げると目を細めて意地の悪い顔をしていた。
「まさか。あいつ、ずるかったし」
「ずるかった?」
「奏花の寝顔が可愛いって俺に言ってきた」
「そっ、そんなことっ」
「あいつの前で眠った?」
最初のコメントを投稿しよう!