第1話 ただの幼馴染ですから!

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カウンターテーブルに肘をつき、寿実がコーヒーを飲む。 「でもね、プライベートも大事だから」 そう言った寿実は真顔だった―――腹の底からの本心ね、これは。 「それに関して異論はないわよ」 「奏花には幼馴染君がいるから、紹介しなくてもいいかなって思ったんだけどね」 げほっとチャイを吐きかけて手で押さえた。 「ただの幼馴染だしっ!それに今はまだ留学中よ」 「音楽院を卒業したんじゃないかったの?」 「卒業したけど、師匠について勉強中って言ってたから」 チェロの偉い先生に師事しているとかなんとか。 「連絡とってるの?」 「連絡というより生存確認よ」 毎日、電話がかかってくる。 自己管理を忘れるタイプの人間だから無視もできない。 「生存確認って……」 「自分のことに無頓着なのよ。ホームシックになって私が留学先まで行く羽目になったんだから」 チェロの勉強のためとはいえ、寂しいならどうして留学するのよ…… 額に手をあてた。 私にはチェロ奏者の幼馴染がいる。 名前は深月(みづき)逢生(あお)。 歳は私の二つ下で手のかかる弟のような存在。
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