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カウンターテーブルに肘をつき、寿実がコーヒーを飲む。
「でもね、プライベートも大事だから」
そう言った寿実は真顔だった―――腹の底からの本心ね、これは。
「それに関して異論はないわよ」
「奏花には幼馴染君がいるから、紹介しなくてもいいかなって思ったんだけどね」
げほっとチャイを吐きかけて手で押さえた。
「ただの幼馴染だしっ!それに今はまだ留学中よ」
「音楽院を卒業したんじゃないかったの?」
「卒業したけど、師匠について勉強中って言ってたから」
チェロの偉い先生に師事しているとかなんとか。
「連絡とってるの?」
「連絡というより生存確認よ」
毎日、電話がかかってくる。
自己管理を忘れるタイプの人間だから無視もできない。
「生存確認って……」
「自分のことに無頓着なのよ。ホームシックになって私が留学先まで行く羽目になったんだから」
チェロの勉強のためとはいえ、寂しいならどうして留学するのよ……
額に手をあてた。
私にはチェロ奏者の幼馴染がいる。
名前は深月逢生。
歳は私の二つ下で手のかかる弟のような存在。
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