15  母と子

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「孫が小学生ですから、おじいさんには代わりありませんよ」 「えー!」  二人で驚いてしまった。最近の大人は、本当に年齢が分からない。みんな年齢不詳だ。 「若く見られたなら嬉しいな。はいどうぞ。税込み価格なので500円ちょうどです」  薄紫の小さなリボンが付いたブーケを、手提げの袋に入れてくれた店員さんは、陽平に手渡した。 「あなたから、彼女に渡してくださいね」  どうやら、私へのプレゼントだと勘違いしているみたいだった。店員さんご夫婦に見送られて、店を出た。なんだかとても、価値のある買い物をした気分だった。  陽平が私を見下ろした。  いつものとおり、私は陽平の右側にいる。 「病院どこか分からないから、案内して」  そう言った陽平は袋を左手に持ち替えて、右手を私の左手に重ねた。咄嗟に言葉が出なかった。でも、勇気を出して指を絡めた。 「うぁっ・・・」  陽平が声を漏らしたから、ぎゅっと握り返して言い返してやった。 「自分から繋いできたくせに」 「相変わらず、負けず嫌いだ」 「そうだよ。こうやって陽平と張り合うのが昔から大好きだった」 「いいねぇ。その感じ。どんどん来てよ」  それはどういう意味だろう? 「11月の模試、圧倒的な勝利を収めますから」 「ああー。それはちょっと悔しいけどそろそろ俺も厳しいかな。理数がなー。二次対策もあるしなー」 「国立なんだ?」 「やっぱそうでしょ?俺、ドクターまで考えてるから、少しでも親の負担を減らしたい。出来たら、留学もしたいし」  知らなかった。  そんなに先のことまで考えてるんだ。 「そっか。陽平も目標に向かって頑張ってるんだ」 「何せ、ハイスペックな彼女がいるから。負けていられない」 「私なんて・・・」 「それ、やめて。栞にはそんなふうに言って欲しくない。そんなふうに自分を卑下しないで欲しい」  あれ?  陽平は、父が言ったことと同じようなことを言ってる?
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