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「孫が小学生ですから、おじいさんには代わりありませんよ」
「えー!」
二人で驚いてしまった。最近の大人は、本当に年齢が分からない。みんな年齢不詳だ。
「若く見られたなら嬉しいな。はいどうぞ。税込み価格なので500円ちょうどです」
薄紫の小さなリボンが付いたブーケを、手提げの袋に入れてくれた店員さんは、陽平に手渡した。
「あなたから、彼女に渡してくださいね」
どうやら、私へのプレゼントだと勘違いしているみたいだった。店員さんご夫婦に見送られて、店を出た。なんだかとても、価値のある買い物をした気分だった。
陽平が私を見下ろした。
いつものとおり、私は陽平の右側にいる。
「病院どこか分からないから、案内して」
そう言った陽平は袋を左手に持ち替えて、右手を私の左手に重ねた。咄嗟に言葉が出なかった。でも、勇気を出して指を絡めた。
「うぁっ・・・」
陽平が声を漏らしたから、ぎゅっと握り返して言い返してやった。
「自分から繋いできたくせに」
「相変わらず、負けず嫌いだ」
「そうだよ。こうやって陽平と張り合うのが昔から大好きだった」
「いいねぇ。その感じ。どんどん来てよ」
それはどういう意味だろう?
「11月の模試、圧倒的な勝利を収めますから」
「ああー。それはちょっと悔しいけどそろそろ俺も厳しいかな。理数がなー。二次対策もあるしなー」
「国立なんだ?」
「やっぱそうでしょ?俺、ドクターまで考えてるから、少しでも親の負担を減らしたい。出来たら、留学もしたいし」
知らなかった。
そんなに先のことまで考えてるんだ。
「そっか。陽平も目標に向かって頑張ってるんだ」
「何せ、ハイスペックな彼女がいるから。負けていられない」
「私なんて・・・」
「それ、やめて。栞にはそんなふうに言って欲しくない。そんなふうに自分を卑下しないで欲しい」
あれ?
陽平は、父が言ったことと同じようなことを言ってる?
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