16 relation

2/12
前へ
/196ページ
次へ
結局、改札を出ても家に着くまで陽平は私の少し前を歩いていく。  手は繋いだまま。  時々話しかけてはくれるけど。  もう6時なのに、まだ暑さは引きそうにない。歩いているだけで、汗が滲む。家の門のところで、陽平は私に先を譲った。門を閉め、短いアプローチを通り玄関扉を開けると、いくぶん熱が籠っていた。  けれど、更に熱い熱に包まれた。陽平の腕が後ろから私に回されていることに気付いて、咄嗟に逃れようとしてしまった。陽平が動揺したのに気付いて、その手に私の手を重ねた。 「驚いただけなの。暑いから、上がって?エアコン入れようか?」 「思ったより涼しい。でも、栞の部屋が見たいな」  私の部屋にエアコンはない。サーキュレーターぐらい。エアコンが苦手な母が、家を建てるときにお願いした夏涼しく冬暖かい家は、なかなか快適なのかもしれない。 「私の部屋?」 「そう。栞のことが知りたいから」  それってつまり・・・そういうこと? 「えっと・・・?」 「お母さんに会った直後に変なことするほど、無頓着じゃないよ」  それはわかる。信用してる。  それぞれの考えのすり合わせは必要な気はするけど、その提案をするのは恥ずかしい。 「頭の中でぐるぐる物事を難しく考えてるんだろう?」 「そうかも」  やっとまともな返答が出来た。 「じゃあ、冷たいお水でも貰おうかな?いい?」 「うん。上がって」  結局リビングに通した。 「お母さん、元気そうで良かったね」 「うん。様子を見ながら動ける範囲を増やしていくみたい。あと、3~4週近くお腹の中にいてくれたら良いんだって」 「そっか。良くなったら退院するの?」 「どうかな?帝王切開って言ってたから、そのまま入院することになるかもしれないって」 「そうなんだ。栞は一人で平気?」 「大丈夫だよ。正直、去年までは二人でいても一人でいるのと変わりなかったから。それを思えば問題ない。今は父が帰ってきてくれるし、一人でも平気」  もう、慣れた。長いこと一人っ子だったし。一人でいることに、それほど違和感はない。 「・・・そっか」  あれ?なんか間違えたかな?
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

275人が本棚に入れています
本棚に追加