16 relation

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「陽平、どうかした?」 「ううん。何でもないよ」  何でもないはずはない。不機嫌なのとは違うけれど、なんだか寂しそうに見える。でも、何でもないって言われたらもう私は何も言えない。    あ、そういうこと?  拒絶されたみたいで、相手のために何の役にも立てないみたいで、だから寂しい気持ちになる。  本当は何でもないわけじゃないって、ちゃんと分かってるから。  さっきの陽平の言葉も表情も、そのせい?  そうだとしたら…。  私は立ち上がって、キッチンに行って冷たいお茶を二つ用意してトレイに置いた。 「陽平?少し暑いかもしれないけど付いてきて。私の部屋、二階なの」  リビングと廊下のドアは開け放したままだったから、そこでもう一度振り返った。陽平は少し戸惑った表情のまま、バッグを持って立ち上がった。  緊張はしている。でも、陽平の気持ちは少しだけ分かったが気がするから私のことを伝えようと思った。  私の部屋は1階よりも少しだけ温度が高い。サーキュレーターのスイッチを入れると少し暑さが和らぐ気がする。 「暑くない?」 「・・・暑くはない、かな?」 「何それ?」 「ちょっと緊張する。女の子の部屋って初めてだな・・・と思って。妹の部屋は、今はもっと殺風景だから。なんか新鮮」  お花柄とかレースとかはないけれど、淡い色合いのファブリック、好きな雑貨を並べた出窓は確かにそう見えるかもしれない。 「ここどうぞ」  机の上に麦茶を置いて、私の机の椅子に座ってもらった。私はピアノのイスを持ってきて、陽平の斜め向かいに座った。 「どうして急に?部屋に入れるの嫌じゃなかった?」 「嫌なのとは違うよ。なんか、恥ずかしかっただけ」  部屋の中は驚くほど静かで、サーキュレーターの回転する音が聞こえてくる。駄目だ。お茶を飲み込む音すら気になってしまう。  たぶん、陽平より私の方が二人きりになることを意識してたんだ。  だから、部屋に入れることを躊躇したんだと思う。  それはたぶん、期待の表れで。そんな気持ちになってることを、恥ずかしく思っていただけ。  いやらしいと思われるんじゃないかって、心配しただけ。  私は立ち上がって、飲みかけのお茶を机にそっと置いた。  
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