16 relation

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「あっちに行ける?」  えっと、あっちというのはベッドですよね?自分で誘っておきながら、既に体には緊張のあまり力が入ってガチガチ。 「栞、怖がらないで?俺だってヤバイ。自分が怖いくらいだ。でも、俺は栞を傷付けない自信だけはある」  ちょっとだけ、肩の力が抜けると陽平が脇を支えて立たせてくれた。 「栞はいつも通りこっち側」  広くはない部屋だから、ベッドまでは数歩だ。二人で横並びに座ったと思ったら、陽平が私の顔を覗き込んだ。 「泣いてる?目が赤いよ。怖いなら、やめようか」  嘘。私は泣いてない。怖い訳でもない。 「緊張してるだけ。熱もってるだけじゃないかな?」  陽平はまた額を押さえて溜め息をつく。これは、ついこの間も見た仕草。いつだっけと考えていたら、不意に唇が重ねられた。  何度も離れては、触れる。  陽平に触れているのは、手をついたベッドの上の指先と唇だけ。満たされているのに、もっと触れたいと思ったとき、少しだけキスが深くなった。顔を離そうとしたとき、陽平の大きな手で頬を支えられた。入り込む舌を、前より落ち着いて受け止められた。  でも、唇を離したとき漏れた自分の息に驚いて、思わず口を覆った。 「いつもと、そんなに変わらないことしてるのにな」  陽平は私を抱きかかえて言った。 「陽平、時間大丈夫?」 「まだ大丈夫。お父さん、帰ってくる?」 「さっきLINEが来ていて、お母さんと話があるから面会時間ギリギリまで病院にいるって。たぶん帰りは9時くらい」 「…そっか」  私に回されていた陽平の腕の力が、少し強くなった。 「もう少しだけ、近付いていい?」 「…うん」  でも、近付くって?  そう私が考えている間に、私から体を離した陽平が、シャツを脱いだ。暑いのかと思ったら、Tシャツまで脱ぎだしたから目のやり場に困ってしまった。何も言葉を発しない陽平に、そっと抱きしめられた。  陽平の体が熱い。それだけじゃなく、耳を当てると早い鼓動が聞こえる。同じなのだと分かると、少し落ち着きを取り戻せた。  陽平の胸に、そっと手を当ててみた。手を通じて温もりと鼓動を感じる。 「…だからさ、栞…」  なぜか大きく身じろぎした陽平。その背中に両手を回してくっついてみた。溜め息をついた陽平が、私に手を回して言った。 「・・・栞は、今、どんな気分なの?」 「緊張はしてるけど、でも、ほっとしてる」 「そっか。良かった」 「陽平は?」 「俺?・・・ちょっと言えない気持ちもあるけど、だいたい栞と一緒」 「ふーん?」  
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