16 relation

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 父が帰ってきた時には、既に9時回っていた。美味しいお総菜を買って帰るから、何も作らなくても良いというメッセージは、陽平を見送った後に気付いた。お風呂を済ませて、取りあえず気持ちを落ち着けることにした。父に対して疚しい気持ちは、どうしても生じてしまうから。  父が買ってきたお総菜は、私が好きなものを選んだんだろう。ガーリックシュリンプと海老のタルタルとエビフライ。全部海老じゃなくても良いのに、なんて言っていたらいつの間にかモヤモヤした思いは消えていた。  明日の日曜は、それぞれ休もうと母から話があったらしく、お見舞いには行かないことになった。  陽平とは、日曜日の午後図書館で勉強した後、少し出掛ける約束をした。  ”あんなことしたんだ”、なんて意識してしまうと、顔すら見られない。話すらできなくて、それがつまらない。お互い同じみたいだから、まずは勉強しようと並んで取り組むことにした。途中、筆談で教え合ううちに少し落ち着いてきた。二時間くらい経って、陽平から“もう限界”という付箋を左手に貼り付けられた。  ふと見ると、陽平は片付けも終えてこちらを見ていた。ちょうど手こずっていた数学の問題が解けたところだった。昨日の遅れは取り戻せたから、頷いて私も片付け始めた。  閲覧室を出て、出口のホールに着くと、陽平が言った。 「嫉妬するくらいの集中力だな」 「羨ましい?でも、陽平だってそうじゃない?」 「俺が言いたいのはちょっと…違う」  何だろう?  「俺のこと忘れてただろ?」 「そんなことないよ。ちょっと手こずった問題だっただけ」 「ふーん」   え?どういうこと?数学に嫉妬?まさか。 「どこ行くの?」 「涼しくて、あまり人がいないとこ」 「そんなとこ無いよ」 「考えて?」 「水辺が良いな。どこかある?公園とか」 「じゃあ、河川敷?」 「いいね。木陰もあるし」  多摩川の河川敷。中学の時よく、ランニングで走りに行った。中学の時、私は陸上部だった。だから、短い間だったけど陽平の妹の美花ちゃんとは関わったことがあったんだ。私は跳躍だったから、練習メニューは違っていたけどランニングは一緒だったはず。夏に引退して以来、学園祭の準備や家のことでほとんど関わる機会はなかった。 「でも、緑道も良いよな?」 「近いし、涼しいし、そっちが良い!」 「よし、決定!」  私たちは日陰を探しながら、徒歩で目的地に向かった。もう三時過ぎだから、幾分日は傾いているけどまだ暑い。歩くと汗が滲む。  それでも、陽平は途中から手を繋いで歩いてくれた。
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