16 relation

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 私たちが“緑道”と呼んでいるのは、多摩川に流れ込む小川に沿うように続く遊歩道のことだ。2キロほど続いていて、様々な木々が植えられている。  木漏れ日が見えるくらいで、ここでは日射しが柔らかい。東屋やベンチ、橋や池もあるからなのか、地元の人ではない人の姿もちらほら見かける。  陽平と手を繋いでいるだけで、景色が違って見える。旅をしているみたいに、川の流れや水鳥の動きが新鮮に目に映る。  私は現実に戻れる?  それとも、この幸せは続く?  長く不安な時間を過ごしていたせいか、こんなに幸せな気持ちが続くことが、たまらなく怖い。素直に喜べれば良いのに。 「こんなに近くにいるのに」  陽平の声に、我に返った。 「ごめん。ぼーっとしてた。あんまりきれいで。涼しくて気持ち良いから」 「そのわりに浮かない表情だよ?」 「ほんとにそうなんだよ?」 「…うん。あそこで休もう」  何ヵ所か通ったけれど、先客がいて休めなかった東屋に漸く空きがあった。 「陽平といると、たぶん気を抜きすぎちゃうんだ。ごめん。退屈させた?」 「そんなことないよ。俺も景色楽しんでたから、栞もそうかなって思ってたんだけど」 「あっ…!」 「…何?」  怪訝な顔で陽平は私を見た。それはそうだ。私を心配して、真剣に話していたから。  でも、これは今すぐ教えたい。 「ね、見て!あそこ。なんだっけ?あの青がきれいな鳥の名前。『やまなし』に出てくる、カワハギじゃなくって…」 「カワセミ?」 「そう、それ!」 「・・・カワハギとかウケる。それ、魚じゃん。」  なんて呟きながら、目は鳥を探している。 「ほら、あそこ。流れが細くなっているところに伸びている枝の上」    大きな声では鳥を驚かせてしまうから、陽平の耳元に顔を近付けて囁いた。 「あ、ほんとだ。いる」  二人で見守った。カワセミが飛び立ったと思った瞬間水面にしぶきが上がり、すぐに飛び去った。 「獲ったな」 「一瞬だ」 「うん」  思った以上に近付いていたことに慌てると、陽平の唇が触れた。 「・・・カワセミ並み」 「もっと、ゆっくりがいい?」  だから、聞くのは止めてって言ってるのに。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
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