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17 relation Ⅱ
分からないことに出会ったら、とことん調べる。人に尋ねることもあるけど、本やネットで調べたり検証したり。
幼い頃からそんな少し変わった子だった。それを面白がる両親だったから、部屋には本が増え、ネット環境が整い、顕微鏡や望遠鏡もあった。いつの間にか、顕微鏡は使わなくなったが、星空は時折眺める。俺が知りたかったのは、人はどこから来てどこへ帰るのだろう?という壮大な疑問だった。
いくら調べても考えても、疑問は次々出てきて果てがない。そのうち、範囲を限定するようになり、アジアの文化に興味を持つようになった。日本人は、どこから?というのが興味を持ったきっかけだった。単一民族なわけがないだろう、という仮説から始めた記憶がある。今の自分なら、あまり近づきたくない類いのガキ。
壮大な疑問以外、自分なら全部明らかにできると思い込んでいた頃、突如現れた存在が俺を戸惑わせた。
それが、栞だった。
成績は良かったと思うし、運動も好きだった。昔の映画を見て、研究者も体を鍛えるべきだと思い込んでいたから、近所のアスリートクラブに入っていた。体力にも運動能力にも自信があった。
入学したばかりの頃から、少し大人っぽくて周りとつるまない栞は気になる存在だった。背は高く痩せている。陸上部というわりに焼けていないなと思った。俺は週末の活動だけで、こんがり焼けていたから。
目が離せなくなったのは、体育の授業で陸上部の栞が見本で背面跳びをして見せたときだ。無駄がない動き。いつも下ろしている前髪が動いて真剣な目が見えたとき、変に音をたてて心臓が鳴った気がした。
そして、初めての中間テスト。五教科で495点取ったのに、学年2位だった。1位は栞で498点だった。社会と国語が99点。他は満点だと、栞の後ろの席の子がなぜか自慢げに話していた。覗き見たんだろうな。
知りたい人には、担任の先生が順位を教えてくれる。2位だとわかったけれど、そういうことだったのかと思った。以来ずっとワンツーフィニッシュ。俺の人生で、初めて敵わない人に遭遇した、と思った。
二人とも学級役員に選ばれて、それから話すようになった。それぞれ小学校が違う智也と香那も同じクラス。
「四人が同じクラスなんて、ありえないじゃん。他のクラスどうにもなんないよ」
後で言われたけど、俺らの意志じゃどうにもならないこと。でも、本当にあの一年は楽しかった。
今ならわかる。最初からずっと目が離せなかったのは、栞がきれいな子だったからとか頭が良かったからとかそんなことじゃない。
心が求めてた。
それが、“好きだ”ということだとわかるまで、3年以上かかってしまっただけだ。
俺にとって、情動と衝動、あらゆる感情を感じた初めての人だったから。
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