17 relation Ⅱ

4/22
前へ
/196ページ
次へ
 夏休みはよいチャンスだと思ったのに、なかなか会えなかった。俺の夏期講習と部活の予定と、栞の課外授業の予定が見事に噛み合わない。何かの祟りかと思うくらい。  あ、あいつの怨念かも?  俺より先に栞に触れたんだから、簡単には許せない。  見せつけるみたいに、俺の目の前で。  今思い出しても、怒りで手が震えるくらいだ。栞が取り乱したり、或いは受け入れたりしてたら、たぶんあいつのことぼこぼこにしてた気がする。怒りのオーラが出ていたらしく、智也が俺の腕を押さえていたから。  自分自身が結構根にもつ方だと、初めて気付いた。いや、栞に関わること限定かも。  会えたとしても電車の二駅の間か、図書館で課題に取り組む栞と少し勉強して家まで送る程度。  8月も終わりに近づいた頃、塾に行く準備をしていたら、俺は使わない数ⅢCの問題集があるのに気付いた。栞のものに違いない。中をバラバラと確認してみた。  何度も解いているのか、問題ごとに正の字が書かれていた。OKはもうマスターしている問題かな。  栞は何においても手を抜かない。努力家と言うよりも、”力がある上に努力する才能もある”って感じだ。陸上もそう。センスがあるのに努力もする。高校では続けなかったけど、家が落ち着いてたら続けていたと思う。  いつだって、栞は無自覚に周りの人を優先する。俺の前だけでも、わがままになれば良いのに。せめて、素直になれば良いのに。  塾の前に届けに行こう。顔が見られたらいい。少し話せたらもっと良い。公園にでも行って、キスでもできたらなお嬉しい。  公の場でくっついている高校生を見て、昔は不快感が強かった。  でも、今ならわかる。  場所も時間もないもんな?  一緒に居るときぐらいくっつきたいよな?  人目なんて気にしてる場合じゃないよな?    そういう点は、寛大になったのかもしれない。俺は余計な口をきかないだけで、本当は我が儘だけど。  そんな俺が、栞のためなら我慢も辛抱も苦労も厭わないんだから、すごいなと思う。  メッセージを送って、すぐに栞の家に向かった。おもいっきり飛ばしたから、10分くらいで着いてしまった。  やっと会える。妊娠中のお母さんが家にいるけど、まあいい。栞に会えれば。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

275人が本棚に入れています
本棚に追加