17 relation Ⅱ

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「えっ?家の人は?」  喜んだのか戸惑ったのか、自分でもよくわからない。どれだけ望んだかわからない、二人だけの空間と時間を与えられて、怖じ気づいたというのが正直なところだ。  俺は渡すはずの問題集を開いては閉じながら、飲み物を用意してくれている栞を待っていた。  栞のお母さんが、切迫早産で今日入院することになったらしい。  こんなに滅多にないチャンスに、栞から俺に触れてくれたのに。  栞の傷だらけの心に気付いてしまった。  栞の痛みに気付けたことも、理由がすぐに見当がついたことも、誇らしく思えるんだからしょうがない。  本当に、栞のことが大事。でも、いつもの俺たちの雰囲気に戻ったとき、ちらりと初めて栞が見せた俺を求める姿に、気持ちが抑えられなくなった。 「栞が煽ったんだからな?」  こうでも言わないと、触れられなかった。一旦触れたら止まらなくなりそうだったから。玄関で良かった。  頬を支えて唇を重ねた。  もっと欲しい、もっと深く。  そんな衝動が込み上げる。知識なのか本能なのか、俺は知らない。  栞の内側に初めて、触れた。熱が、柔らかさが心地よくて、夢中になって舌で口内を探った。  栞の体の力が抜けていくのも、ぎゅっと俺のシャツをつかむのも可愛くて仕方がない。栞の膝が崩れる前に、唇を離し抱きかかえた。どんな表情か、想像するだけでヤバい。栞の顔を見たら、きっと家に上がり込んでしまうだろうと思った。  名残惜しかったけど、満ち足りた気持ちだった。栞が、俺と同じように思っているとわかったから。    その夜、電話で話したときお母さんのお見舞いに一緒に行きたいと伝えた。栞に会いたいのはもちろんだけど、お母さんに挨拶をしたかった。そして、栞がどれだけお母さんの存在を大切に思っているか伝えたかった。  責め立てたい気持ちはあったけれど、入院までした人にそんな仕打ちはできない。何より、栞が喜ばない。せめて、栞がモヤモヤした気持ちを抱えていて、それを悔やんでいることは知って欲しかった。
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