17 relation Ⅱ

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 栞が戻ってきたから、俺は席を外すことにした。二人でゆっくり話せば良いと思う。  今日の俺の任務も目的も完了。  もう少し一緒にいたいけれど、お母さんに会い、しかも“彼”であることを認めてもらえた直後だ。何だか色々躊躇われる。  そう思っていたのに、帰りの電車で俺の肩に凭れて居眠りする栞を見て、気が変わった。安心したような寝顔も、飛び起きようとした慌てようも、俺の前だからだと思うと嬉しくて。このまま、さようならじゃやっぱり寂しい。 「一緒に過ごす時間を大事にしたい」  勇気を出して伝えたら意外な返答。 「先のことはわからないもんね」  どんなフィルターを通すと、俺の言葉はそんな風に栞に伝わるんだろう?  全然、違うのに。  伝わるように話す。触れる。  それ以外に、できることはなんだろう?  ため息が出る。  本当に、早く大人の男になりたい。栞を甘えさせられるような。   「この後、栞の家に行く。塾に間に合うように出るから」  お願いでもなく、宣言。  俺が好きな栞の奥二重の瞳が光を帯びたとき、もっと見たいけと見ているのが苦しくて、いつも前髪をぐしゃぐしゃにしてしまう。栞に感じる思いが一気に込み上げたときだ。  5年後の俺はそんなとき、栞に何を言うんだろ?相変わらず、前髪をぐしゃぐしゃにするんだろうか?  その先だって、一緒にいる想像しかできないのに、”先のことはわからない”なんて。  栞の家に着いて玄関ドアを閉めたとき、もう抑えられず後ろから栞を抱きすくめた。  それなのに、栞は俺の手を避けようとした。慌てたように俺の手に触れてくれたけれど、怖がらせたのかもしれない。部屋を見たいと言っても、つれない反応だ。  あーあ。  がっつきすぎだったのかな?少し触れたかっただけなのに。  安心したかったんだ。  なんか、俺ばっかり思う気持ちが強いみたいで。
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