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「触れて欲しいと思ってるし、触れたいの」
自分で選んで決めたのに、拷問みたいだ。栞の中に踏み込めない。だから、触れるだけのキスを何度も唇に、身体中に繰り返した。
息を止めては、少しずつ逃す栞を見てたまらない気持ちになる。終わりをどこに設定したら良いんだろう?
何度目かで首筋に触れたとき、栞が息というより小さな声を漏らした。
ずくんと腰の辺りがうずく。
これは、…まずい。
「あ、やだ。…私」
きっと、動きを止めた俺が変に思ったと思うんだろうな、栞なら。それなら、恥ずかしい思いをするのは俺で良い。
「違うよ。栞の声に興奮した。…栞はどこまで知ってる?性のこと」
「…保健の教科書レベル。あとは女の子の噂話程度、かな?」
「俺の体、今結構大変な状況なわけ」
「大変?」
「そう。限界に近いの。栞が好きで、可愛くて仕方ないから」
何やら察したようだ。
「だから、堪えただけ。もっと栞の声聞きたいけど、どうしようって考えてた」
「私にできることはある?」
「…ない。でも、辞めるのもやだ。」
「休憩する?」
あ、想像以上に俺カッコ悪いし恥ずかしい。まあ、いいや。
「ごめん。…トイレ貸して」
「部屋出て、右側の二つ目のドアだよ」
どんな顔で戻ればいいのかな。恥ずかしいったらない。ノックしてドアを開けた。栞はまだベッドにいるみたいだ。
そっと近づくと、顔を見せないまま俺を探すみたいに栞が手を伸ばした。
「変に思ったでしょ?着替えないで待ってるなんて。…でも、まだ終わりたくない」
そんなこと、思うはずがない。気持ち悪がられなくて、ほっとしたくらいだ。
「俺だって同じだよ」
真っ赤な顔の栞に口づけた。
「じゃあさ。時間決めよ?そしたら、俺もさっきみたいにならない…かも。我慢できる」
「それって、自然なことでしょ?隠さなくていいよ?」
もう栞は恥ずかしそうじゃなかった。自分の事じゃなくて、俺の事だからかな。
「デニムも、脱いで?私だって恥ずかしいの我慢したんだから」
たぶん、栞は下着一枚だけの姿のままだ。
「怖くない?俺のこと嫌にならない?」
「怖くないとは言わないけど…陽平のことは嫌だなんて思わない。絶対に」
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