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少し苦労しながらデニムを脱いだ。本当に栞は大丈夫かな?
覆い被さり、足が触れ合うとまた腰の辺りがうずく。
「そっか。…こういうことか」
栞が目を伏せたまま呟いた。離れようとすると、栞の手が俺の腰に触れた。
「離れないで。父が以前言ってたの。“想像と現実はいつだって違う”って。それなら私、本当のことを知りたい。陽平のことなら、もっと知りたい」
「栞」
何も言葉にできなくて、ただ名前を呼んで触れ続けた。栞は時折息を漏らして、それを隠すことをしなかった。栞が触れる指に、俺も息を漏らした。そうやって、決めた時間まで触れ合った。
「明日また、…来て良い?」
栞は頷いた。
「だから、聞かないでってば」
栞が赤い顔で俺を睨んだ。かわいいだけだけど。
「栞もそう思ってるってちゃんと確かめたいんだけどな」
「わかった。じゃあ私から言う。明日も来て。明後日も。その後だって都合が合うなら会いたい。明日から、私は家で待ってる。着いたらLINEする。OK?」
「OK」
一気に言った後、枕に顔を埋めた栞の耳は真っ赤だ。本当に、思わずという感じで、唇で耳を挟み、その熱さを抑えるみたいに舌でなぞった。
俺が今まで聞いたこともないような官能的な声を洩らした栞が、俺を振り返った。たぶん、少しの間見つめ合ったんだと思う。
「・・・やだっ」
栞はまた枕に顔を埋めた。仕方ないから、剥き出しの背中に耳を付けた。煩いくらいの鼓動の音は栞だけじゃない。
「こんな声、他の誰にも聞かせたくない。こんな姿も俺以外の誰にも見せなきゃ良い。早く、俺のものになって」
「嫌じゃないの?」
「何が?」
「いやらしくない?私」
「栞がいやらしいって何それ?」
「だって、わからないんだもの」
「俺だって知らない。それに、俺、栞以外知らなくて良いから」
栞が体を動かしたから、そっと隣に寝転がった。栞が上から俺を覗き込む。
「いいの?それで」
「それがいいの。栞は先のことは分からないって言うけど、俺はもう決まってる気がする。栞が変わるなら、仕方ないけど・・・」
言いかけた言葉を栞が唇で塞いだ。栞から初めて唇を重ねてくれた。
「次、そんなこと言ったら許さないから」
「どれのこと?」
「私の気持ちが変わるみたいな・・・」
今度は俺の番。右手で栞の頭を引き寄せて唇を重ねた。
離れがたい。
明日も明後日も、待ち遠しい。
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