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「わわわっ…」
マンガみたいな声を出した栞に、思わず吹き出した。
「どっちに戸惑ったの?」
「…両方」
身じろぎした栞の体が触れて、俺は思わず息を漏らした。栞の肌に触れるだけでこうなるなら、明日俺はどうなるんだろ?
「触れるだけで…気持ち良かった」
「…大変だ、ね?」
「他人事みたいに言うな」
俺は栞の耳をがぶっと噛った。
栞がまた声を漏らす。恥ずかしがりながらも、栞は懸命に言葉を継いだ。
「・・・違うの。辛いんじゃないかなって思っただけだよ?」
「たぶん、栞は痛い思いするんだよ?それ考えたら、全然平気。でも、栞が痛がったら俺、何にも出来ない気がする」
「わからないね。何にも」
なぜか楽しそうに栞が言う。
「どうした?」
「初めてが、陽平で良かった」
「ほっぺのキスは、俺が最初じゃない」
思わず口にしてしまった。はっと息を飲む栞。
「ごめん。栞が悪い訳じゃないのに」
俺は何度も頬に唇で触れた。
「過去は消せないから仕方ない。代わりに今から身体中キスしようかな」
肩や鎖骨に口付けたら、栞が体をビクッと跳ねさせた。腕に唇で触れ始めたら、栞が慌てたように目を開けた。
「まさか、本気?」
「本気だけど、ダメ?」
「全部?」
「うん」
「そんなことしなくたって、私はもう…陽平しか見てないよ?」
栞の言葉が、俺を落ち着かせてくれた。
「じゃあ、焦らなくて良いんだ?」
「そうだよ」
栞がまた、俺の髪に触れた。優しく頬や耳に指で触れてくれた。
「栞が素直だと更にかわいい。やば」
「普段は可愛くないみたい」
「普段は、かっこいい感じかな?」
「女子に“かっこいい”って言う?」
「“男前”って言うのやめたのに」
ふふっと栞は笑った。
「陽平がわかってくれてるなら、それで良いんだ」
「あ、今一番辛い」
「え?」
「今、繋がりたいって思った。気持ちが通じたから、体も。って」
栞が目を潤ませた。
「そんな風に思ってくれるなら、たぶん明日も大丈夫」
俺たちはまたしばらく触れあった。
「繋がりたいって理由、他に何がある?」
「女子高の周りに、時々いるの。卑猥なこと叫ぶ人とか、つきまとう人とか」
「最低だな。ほんと、栞、気を付けて?」
栞の頬を撫でた。悪い男が近付きませんように。でも、釘も刺しておこう。
「そんな奴と俺を一緒にしたら怒るからな」
「全然違うよ?分かってるからね」
「良かった。・・・明日だね」
「そうだよ」
「やっとだ」
「そうなの?」
「そうなりたいって思ってた。ずっと」
「もし、うまくいかなかったら?」
「お互い初めてだから、そんなこともあるかもしれない」
「怒らない?」
「何を怒るの?」
「わかんない」
ふふっと栞は笑った。
「ありがと。大事にしてくれて」
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