275人が本棚に入れています
本棚に追加
その夜、俺はなぜかぐっすり眠ることが出来た。
翌朝も目覚めは爽やか。部活は暑さ対策のため早朝から始まり、11時には終わった。帰ってシャワーを浴び食事を取り、今日も涼しい図書館で勉強しながら栞の連絡を待つ。でも、1時になっても、2時になっても連絡がない。
心配になってLINEを送った。
“どうした?何かあった?”
すぐに返信が来た。
“ごめん”
“無事なら良いんだ。今どこ?”
“家にいる。ごめん”
どうしたんだろう?もしかして、不安になったのかな?
“電話して良い?”
返信がないかわりに、着信を知らせる表示。急いで通話が可能な場所に移動した。
「栞、どうした?大丈夫か?」
「うん。ごめん。連絡しなくて」
「何かあった?」
「・・・ううん」
「俺のことなら気にするなよ?」
「違う。陽平じゃないの。私が・・・」
「体調悪いのか?」
あっ、と思った。もしかして、・・・あれでできなくなった?それなら仕方ないよな。言えなくて困ってたら、それは可哀想だ。
「違う。違うけど・・・私陽平にっ」
なんか様子がおかしい。どうしたんだろう?
「栞、何にもしないから今から顔見に行って良いか?直接なら言えることもあるだろ?」
「・・・私、陽平に嫌われたくない」
「そんなことあるわけないよ」
ここがホールだということを忘れて、大声を出すところだった。
「ごめん。今図書館にいるから思うように話せないんだ。すぐ行くから。待ってて」
「・・・わかった」
いつも以上に自転車を飛ばし、栞の家に向かった。チャイムを鳴らすと、栞は出てきたけれど、目は合わせてくれない。今日は少しゆったりしたワンピースを着ていた。
「良かった。何かあったかと思った」
栞は首を振る。
「お母さんも問題ないんだよね?」
栞は俯いたまま頷く。
「お父さんも平気だよな?」
栞は変わらず頷く。
「じゃ、何があった?」
「私・・・。どうしよう?」
「・・・栞?」
顔を覆った栞は戸惑っているみたいだった。
「俺、上がっていいか?」
「ほんとに、私のこと嫌だって・・・思わないなら」
「約束する。絶対いやにならない。それより、心配なんだ」
「もう、どうして良いかわからなくて」
いったい何があったんだろう?
栞の目蓋は泣いていたのか、赤く腫れぼったい。明らかに様子がおかしい。
「栞の部屋でも良い?」
「…うん。今日はずっと部屋にいたから。下は暑いと思う」
すぐに、栞の部屋に移動した。ベッドに座った栞を前に、机の椅子に座って話した。
「学校、行かなかったのか?」
「休んだ」
一体どうしたんだろう?
「平気なの?」
「今日から3日間は質問と自習の設定だから、欠席連絡も要らないの」
「ふーん」
「昨日までは、ちゃんと出るつもりだったけど」
最初のコメントを投稿しよう!