第四部 18 それぞれの選択

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 唐突だなと思いながらも尋ねた。 「え?美花ちゃんは?」 「定時制の高校に行き始めたんだ。時間にずれがあるのも、生徒が多くないのも妹には合ってるみたいだ」  美花ちゃんのことを話す陽平は、少しほっとした表情に見えた。  去年の夏休みに、初めて肌を重ねた私達だけど、その後は“二回だけ”。  “二回だけ”って、私は思ってしまう。冬休みと春休みに、やっぱり”儀式”がいいかなって陽平が言ってそんな流れになった。とても近くに感じて、幸せな気持ちになれた。  なかなか会えず久しぶりに会えたときは、深く繋がれたらいいのにって思ってしまうこともある。言えないけど。  陽平が大事にしてくれてるのは、よくわかるから。 「私、一回家に帰って自転車で行こうか?」 「いや、バスで行こう。実は今日の朝は結構雨が降ってたから父さんが車で送ってくれたんだ。だから、俺も足がない」 「歩いてもいいよ?」 「帰り歩こうよ。ちゃんと送るから。行きは上りが多いんだ」 「ふーん」  今日は新入生に関わる学校行事で、休みだった。偶然陽平も同じで、図書館で勉強していたのだ。午前中頑張って勉強して、今はランチタイム。  携帯を見ていた陽平が言った。 「10分後に駅からバスが出るよ。それで行こうよ」 「わかった」  桜はもうすっかり葉桜。ハナミズキが咲いている歩道を歩いて、二人で駅に向かった。陽平の家は駅から歩くには少し遠くて、自転車かバスで移動する。でも、2キロくらいだから、この季節なら歩けないこともない。  ただ、問題は坂道。高台にある住宅地だから、確かに坂が多い。通学時、行きは良いけど帰りが結構足に来るらしい。  そんなわけで、この辺りは車で通勤する人も多い。都心とはやはり違う。  二人で電車に乗ることはあっても、バスに乗るのは初めてかもしれない。少しだけ、わくわくしている。陽平が先に乗せてくれたから、進行方向左側の空いている座席に座った。私は陽平の左側に座って、やはり慣れない左の横顔を見て、胸がざわつく。  自分で決めたけれど、こうやって会いたいときに会えるのもあと一年か。溜息が出そうになった。 「どした?」 「ううん。左側だなって」 「だな」 「新鮮だなって」 「栞、考えたことないだろ?」 「何が?」 「俺だって、同じなんだよ?栞の右側も、横顔も新鮮」  なんでだろう?秘密を知られたみたいで、すごく恥ずかしくなった。
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