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―――しまったな・・・。
―――逃げたら『俺がドラキです』って言っているようなもんじゃないか・・・!
だが一度走り始めてしまえば、もう止まることはできないし止まったところで余計追及されるだけだ。
「竜希くん、どこまで行くの?」
「どこか人がいないところまで!」
正直、打てる手も少なく、多目的トイレを見つけると二人で一緒に入り鍵を閉めた。 流石に公共物を破壊してくるようなことはないだろうし、出てこなければいずれは諦めるだろう。
もっともここを利用したい人がいれば迷惑をかけてしまうが、緊急時のためそうは言ってもいられない。
「ここなら安心だね」
「一時的なしのぎにしかならないけどな。 ・・・何かごめんな、俺のせいで」
「ううん。 竜希くんは何も悪いことをしていないじゃん」
「でも・・・」
「・・・ねぇ。 どうして竜希くんがドラキくんだって分かったのかな?」
夕香里が小声で尋ねてきた。 ただその答えは竜希も分からなかった。
「それが疑問なんだよなぁ・・・。 声だけで断定するって普通は有り得ないと思うんだけど」
―――でも喋り方とかもあるのかもしれない・・・。
―――最初に声をかけられた時は、まだ発声していなかったはずなんだけど。
だが今までも声から判別されたことがあり、今後はリアルでの喋り方に気を付けないといけないと思った。
「・・・あれ? 竜希くんのスマホ鳴ってない?」
「ん? あぁ、朝からずっとだよ」
竜希は常に鳴っているのに気付いていたが、静かな多目的トイレの中へ入り夕香里も気付いたようだ。
「朝からずっとなの? いつもそんなに鳴っていたっけ?」
「それが今日は特別多いんだよな」
「確認してみた?」
「いや。 夕香里と一緒にいる時はあまりスマホを触りたくない。 夕香里との時間を大切にしたいし」
そう言うと夕香里は嬉しそうに笑ったが、すぐに心配そうな表情をして言う。
「でも一応確認してみたら? 今の非常事態、何か分かるかも・・・。 今まではこんなことなかったんでしょ?」
「まぁ、確かにな・・・。 じゃあ・・・」
夕香里のアドバイスからスマートフォンを取り出し確認する。 まず目に飛び込んだのは今朝見ていたエゴサーチのサイト、消していなかったためそのまま画面に残っていた。 そこに変化があった。
【ドラキの年齢は大学生から20代前半。 身長は175くらい。 同い年くらいの彼女持ち。 名前はユカリ】
「は・・・!? いやいや、こんな情報朝に確認した時はなかったはずだ!!」
「竜希くん、どうしたの?」
夕香里の言葉も混乱した頭には届かなかった。
―――いつだ?
―――いつバレた?
―――いやそもそも、どうしてバレた!?
―――今日声をかけてきた人たちが書いたかもしれないけど、俺はドラキだと打ち明けてはいないし・・・。
どうしてバレてしまったのか調べていると着信がなった。 表示は仲のいいリュカからだ。
―――またコラボの誘いか?
―――今はそんなことをしている場合じゃないんだって!
無視をして調べ続ける。 するとリュカからメッセージが届いた。
『これを読んだらすぐに電話をかけてくれ!!』
何故か少し怒っているように感じられた。 コラボの誘いなら別に急ぐ理由はないはずだ。
―――急にどうしたんだろ・・・。
―――流石にここまで出ないということは、俺が今プライベート中だって察しているよな?
―――それでも連絡をするということは何かあったのか・・・?
夕香里に確認すると電話していいというため、心配になり折り返しの電話をかけた。 するとリュカはワンコール鳴る間もなくすぐに出た。
『ドラキ!』
「リュカ! 悪いけどちょっと今は取り込み中で」
『ドラキ! 昨日の自分の配信を確認したか!?』
「配信? ・・・どうして?」
『見ていないんだな? 今から昨日の配信の切り抜きを送るから見てみろ!!』
その言葉の後すぐに短い動画が送られてきた。
―――昨日の配信で俺マズいことでも言ったか?
―――プライベートの話は一切口にしないって決めているから、そんな凡ミスはしないと思うんだけど・・・。
その疑問を思いながら送られてきた動画ファイルの再生ボタンを恐る恐る押した。
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