ありふれた三つの橡林~その26

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ

ありふれた三つの橡林~その26

9月4日(土)  曇り  夏の終わりの  バス停は  夏の終わりという  名前では  ないけれど  古びて  傷み  いかにも  終わりを  告げる  かのように  侘し気に  佇んでいる   もう  バスは  来ない  だろう    昨日までは  きっと  そう  日に  数本でも  バスの  立ち寄り  そして  走り去って  いたはず  なのに  だけど  今日は  もう  新たしい  季節  バスの  来ない  季節の  到来したのだ    だけど  それと  知らずに  いつまでも  バスを  待つ人は  いないのだろうか  この  バス停には  なんの  お知らせも  出されて  いないから  バス停の  背後の  橡林の  一番端の方の  一本の  樹に  稲光の  形をした  折れた  枝の   一つ  垂れ下がっている    そういえば  昨日  夕方の  曇り空に  稲光の  走り  遠い雷鳴の  空気を  震わせた  そろそろ  稲穂の  黄金色に  光輝く  稔りの  時の  サイン    今日からは  もう  バスの  やっては来ないと  バス停に  お知らせは  なくとも  見るべき人は  ちゃんと  サインを  見ている    ここに  来るまでの  間にさえも  すでに  一枚か二枚の  田んぼでは  稲穂の  刈り取られていた    そして  この先  あり通う  山間の  温泉までの  曲がりくねった  道沿いにも  きっと  そんな  田んぼを  幾枚かは  見かける  ことだろう 9be8eb76-11e6-4ac3-9c62-91cf4307328c1c8cb21f-33bb-465f-8563-36c219037b2458177c2e-d9b4-4370-9c3d-9c1aeb021129  
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!