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「アンドロメダ師団第百二十四艦隊、赤経一三、二五、赤緯マイナス三〇、〇、〇に空間転移」
超銀河星団艦隊のスペースダイブが開始された。
漆黒の海に光の水しぶきが上がると、ひとつ、またひとつと宇宙戦艦の姿が浮かびあがる。暗黒星界艦隊への総攻撃が始まる。
「超重力波魚雷発射、敵艦隊をトラップポイントに誘導」
敵艦隊を包囲すると、全戦艦から一点に向けて一斉に魚雷が発射された。
魚雷が爆発すると時空は大きく歪み、黒い渦潮を造りだした。その渦潮に巻き込まれ、敵艦隊は衝突しあい編隊を大きく崩す。
「ブラックピット発動」
人工ブラックホールが形成されると、敵艦隊の頑丈な甲板が紙屑のようにひしゃげ、爆発する間のなく押し潰されながら、渦潮の中央に吸い込まれていく。
「奇襲成功、事象の地平面に取り込まれないよう、全艦緊急離脱」
全戦艦が百八十度反転すると、艦尾に装備された六筒の光子ロケットから白い光が射出され、超高速航行に移行した。
星雲漂う宇宙に描かれた流星の大河は、超銀河星団艦隊の凱旋を祝うように輝いていた。
「総司令官、シャプレー超銀河団の防衛に成功しました」
副司令官から報告があった。
[ギャラクシー・アーマタ]
[ミッションクリア]
[おめでとう! あなたが世界チャンピオンです]
「い、よっしゃー! 世界大会制覇!」
「お兄ちゃん、うるさい! いま何時だと思ってんの」
午前三時、平屋の一軒家。隣で眠っていた妹に怒鳴られる銀牙。八畳間をカーテンで仕切り、兄弟で共同で使っている。
「全世界コマンダーの頂点に立つってことが、どんなにすごいことか、赤莉にはわからないんだよ……」
銀牙はぶつぶつ言いながら頭からヘッドホンを外し、パソコンの電源を落とそうとボタンを押した。
「あれ?」何回押しても電源は落ちない。
美少女キャラクターの壁紙画面をじーっと見つめていると、テキストが表示された。
[おめでとうございます、お迎えにあがります]
「……お迎え?」
いつまで経っても電源は落ちないので、銀太はそのまま敷布団の上に倒れ込み、深い眠りに就いた。
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