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おかしい。
そう思ったのは、クラスの中で最も帰るのが遅いと言われる表くんの姿を、校門で捉えた時だった。
もうこんな時間になるのに、まだ迎えに来ないなんて、おかしい。
私が表くんの姿を捉えた約一秒後、表くんも門に寄りかかっている私の姿を捉える。そして、約二秒間、見つめ合った。
気まずさから目を逸らした私に、表くんはイジワルな笑顔で近づいてくる。
「な、何?」
そう言うのが精一杯だった。何を言われるかなんて分かっていたから。
「あらあら、藤原のお嬢ちゃま、まだお迎えは来てないんでちゅか?」
案の定、お迎えについてだ。
「お嬢さまじゃない」
「お嬢さまだろ、高校生にもなってまだお母さんに車で迎えに来てもらってんだから」
「お嬢さまじゃなくて、母が過保護なだけ」
もちろん母が過保護だって知られるのも最初は恥ずかしかった。
だが、毎日毎日校門の前で、車の窓から顔を出して、
「愛理ちゃーん、お迎えに来ましたー!」
なんて叫ばれるから、それがクラス中、いや、学年中に知れ渡って、もう恥ずかしくもなんともなくなった。今なら声を大にして言える。
私の母は、過保護です。
と。
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